正論なんてぶった切ってやる

里見 シズル

1話

俺は疑問に思うことが山程ある。しかしそのどれもが世間の言う正論という道理の正しい議論によっていとも容易く踏み捻られる。しかし、それでも俺は疑問に思う


なぜ学校に行かなくてはいけないのだろう?

なぜ上司に対して毎回頭をさげなくてはいけないのだろうか?

なぜ好きな事ばかりではなく嫌いな事もやらなくてはいけないのだろうか?


だが、このような疑問に対して返ってくる答えは全てつまらない「正論」ばかりである。いくら俺がこれに楯突いても、世間はいつも冷たい目を向けてくる。そして、世間は言う


「いや〜それが当たり前だからな」とか「何言ってんの?お前そんな事言ってたら社会で生きていけないぞ」とかだ。


しかし俺は思う、誰がそんなつまらないことを決めた?お前たちは自我を持っていないのか?こんなにもつまらぬ事に縛られつずけて楽しいか?俺は思う、この世界でそんなものに縛られて楽しく過ごせているやつなど一人もいない。この世界は、間違っていると…


***


ピーピピピーピピピーピピピーピピピー…


なんだこの不快な音は、聞いているだけでおかしくなりそうだ。と思いつつ顔を上げるとそこには黒い目覚まし時計が6時半をさしていた。もう会社へ行かなくてはいけない時間だなと思いつつ、ゆっくり体を起こし、俺はその目覚まし時計を止めた。


不快な音が消えたと思いきや、俺の視界には、今まで見たことのないものばかりがあった。少し大きめのベッド、枕元に置いてある少し汚い剣、穴が空いたマントなどなど。よく、ラノベとかで見る「ザ・異世界の部屋」がそこにはあった。凡人が初見でこれを見れば、誰もが戸惑い、怯えるだろう。しかし、俺は違う


「ハッハハ…この歳になって幻覚を見るなんて、よほど嫌なことがあったんだな自分?しかし、現実は向き合わなくてはいけないものなんだと何度も思い知ってきただろう?」


とか変な事を自分に言い聞かせつつ俺は目をこすった。なんだこれ?何度目をこすっても見えるものは変わらない。そこにあるのは、異世界のような部屋だった。凡人がこれを体験すれば、異世界に来たと錯覚し、恐怖に陥るに違いない。しかし、俺は違う。このようなもので、騙されるような愚か者ではない。


「ハッハハハハハハ〜!何とも長い夢だ。早く起きなくては、寝坊してしまうぞ。」


そう言って、俺は、立ち上がり、部屋の隅にあった洗面所に足を運んだ。そして、水で顔を洗った。しかし、いくら顔を洗っても一向に昨日いた見慣れた部屋に戻ることはなかった。そこにあるのは、起きたとき見た奇妙な部屋だった。いくら水で洗っても無駄だと判断した俺は顔を上げた。そして、俺はベッドの上に座り込み考えた。


昨日、俺は何をしていた?今、自分が目にしている光景は何だ?この現象をどう説明する…


色々考えた末、俺はこの場所が何なのかをまずはじめに知る必要があると判断した。そして、俺は無言でそこにあったマントと小さなカバンを取り、その奇妙な部屋を出ようとした。だが、その外の光景を見た俺は、硬直してしまった。なぜなら、そこには人間とは思えぬ容姿をしたものばかりが集まっていたからだ。ファンタジーでよく見る、ゴブリンや、ドワーフや、エルフ、人のような犬のような生き物さえいた。姿形は違うものの、しゃべる言葉は俺には理解できた。そこの生き物たちは、現代社会とは少し違った形をした建造物が並ぶ道を歩いていた。そこでは、買い物をするものや、知り合いと世間話をするもの、制服のような格好をした子供など、日本といたって変わりのない事をしている生き物たちがいた。


「何なのだこれは!?」


この光景は、今の俺にはインパクトが強すぎた。俺は、その状況を飲み込めず数秒間硬直していたが、考えるのは後にすると自分に言い聞かせ、その奇妙な街を歩き回り、この前にいた場所とは違う世界を知る事を決意した。





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