第5話 休職
今度の会社で4社目になる。今まで経験した会社は3つ。でも1社目と3社目はほとんど仕事せずに解雇されているので、実際の経験としては2社ということになる。
4社目となる今の会社に入ってもう2年位経つ。最初は工場でラインに入った。製造の現場での勤務となった。これが中々しんどかった。製造ラインに張り付いてないといけないのだ。トイレにも自由に行けない。自分のペースで仕事ができなかった。その工場での契約は3ヶ月で終わった。
全国転勤は将来的に可能だと採用の時に話した。確かに将来的に可能だとは話したが、それがたった3ヶ月後になるとは思っていなかった。東北から北陸へ引っ越しである。
さて、北陸での仕事だが、これが合わなかった。紙の図面と格闘する日々。図面を描くわけではない。細かい修正なのだ。正直マシーンに任せるべきだと思った。人間というリソースを割くのは僕には非合理的に思えた。次第に仕事が辛くなっていって休職した。
さて、休職すると給料が出ない。傷病手当を申請した。しかしこの書類も休職期間が終わる頃じゃないと出せない。休職した2ヶ月間は無給だった。仕事しないと時間ができる。ご飯は毎日食べる。電気・ガス・水道・ネットも金がかかる。親戚にお金を借りた。
2ヶ月の休職を終えて、復職することになった。新しい派遣先は東海だった。また引っ越しである。東海で半年ほど働いて、初夏になった。二度目の休職をした。ある日、会社に行って調子が悪くて出勤したものの即帰宅することになった。その足でかかりつけの心療内科へ行った。診断書が出た。二度目の休職である。
二度目の休職のときも、給料は出ない。少ない預金と国からの一律十万円の給付が頼りだった。それから傷病手当金である。仕事に就いた後に、もしも病気で働くことができなくなったら、傷病手当金を受け取ることで、しのぐ事ができる。傷病手当金は額面の給与の60%が支給される。受給できる期間は一年半である。休職したら傷病手当金を申請すると休職期間が終わった後に受け取る事ができる。退職してからは毎月、会社の健康保険証に記載された組織、例えば協会けんぽに申請用紙を郵送する。書類には医師の所見も書いてもらわねばならない。なかなか大変である。
退職してからは毎月、傷病手当金を受け取っている。結局、4社目も退職した。無理をすれば働けただろう。だが、無理をして働いたらもう回復しないぐらいに弱りそうだった。夏に部屋を引き払い、700km程度の道のりを車で行き、実家に戻った。自宅療養が始まった。
仕事はしていない。それでも生きてゆく。
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