第3話 パワハラ上司

「キムラ君は、いろいろなものが欠けてるの!」

今日も課長に怒鳴られている。新卒扱いでとってもらって、そろそろ丸一年くらいかな。いつからか、課長に怒鳴られるのが日常になってしまった。確かに満足に仕事をこなせていないのは事実だけれども、感情的に怒鳴られるのは堪える。割と広いフロアを二分して二つの部署が入ってるオフィスの、端から端まで課長の怒鳴り声が響く。オフィスの反対側には別部署のお姉さん方が座っているのだけど、課長の声はそこまで聞こえるらしい。


仕様書とにらめっこしてよくわからなくて質問すると、

「キムラ君の訊いたことは全部、仕様書に載ってるんだよ!」

と切り替えされ、コーディングしてて理解できないって騒いでると、

「できないできないって、俺とか周りの人達はもっと高いハードルを超えてきてるのに、こんな簡単なのもできないなんて、癪に障るよね!」

とか、

「できないできないじゃなくて、できるようにはどうするかを考えろ。」

とか返される。それが出来れば苦労はしないんですよ、課長。


最初の3ヶ月は参考書を積まれて8時間みっちり自習だった。そこまではまだ良かったけど、3ヶ月過ぎた辺りから実戦投入された。そこでは3ヶ月の間に実際にコーディングやコンパイルをしてなかったのが裏目に出た。コーディングの感覚が無かったからイマイチ要領がつかめないのだ。分からないところを訊いたら最初は課長も怒鳴らずに教えてくれた。それがいつからだろうか、怒鳴られるようになったのは・・・

仕事もロクにこなせなかった僕はその後、体調を崩して退職した。高熱が出てまるまる2周間出勤できなかったのだ。


職場からは離脱したが、心の傷は未だ癒えていない。だがそれでも、人生は続いていく。

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