第2話 不登校だった小学生時代

そういえば名乗っていなかったな。僕の名はキムラ。今でこそ工学修士でなんちゃって社会人をやっているが、かつては不登校だった。学校や教師がとても嫌いで、憎んですら居るような子供だった。今回は僕の人生の中で何度か訪れた引きこもりタイムの中で初めに訪れた不登校の話をつづる。


小学生のキムラは、実は半分くらいしか小学校に通っていない。6年生に至っては出席日数0である。通わなくても卒業できるのが日本の小学校らしい。地域によって出席が必要なところもあると小耳に挟んだが、僕がかつて半分くらい通った小学校では出席日数は問題にならなかった。


なぜキムラ少年は不登校になったのか?原因は僕自身にも判らない。ただ、学校という制度が合わなかった気がする。僕はまるで拒否反応とでも言うように、学校に通うのが苦痛だった。別に授業についていけなかったわけでもない。勉強は嫌いではない。友達も居た。ではなぜ?はっきりとしたことは言えないが、一つは教師の存在が許せなかったことがある。小学校では先生の言うことがたとえ間違っていたとしても正しいとされ、逆らうのをまるで悪のように扱われた。また、理不尽に怒られることもあった。そういう、クソ教師や盲目的な同級生への不満が、僕を学校から遠ざけた。そうして引きこもった僕は、自宅の部屋でクソな教師や同級生への怒りを反芻していた。一人考えことにふけったりもしたものだ。


小学校では1、2年生は休みがち、3年生は最も出席した。4、5年生は途中から行かなかった。5年生で行き直したのだが、夏休み前に風邪で休んだのをきっかけに行かなくなった。またこの学年のときの担任とは反りが合わなかった。


そんな出席率で読み書き計算は困らなかったのか?全く困らなかった。少ない出席の中で四則演算と漢字の読み書きは学習していた。中学に上がってから数学の計算のときに少数の割り算の辺りを知らなかったので周りの同級生に訊いたくらいで、中学に上がってからも、学校以外の場所でも、字が読み書きできなくて困った事は無い。


僕は学校も教師も嫌いだったが、勉強が嫌いだったわけではない。学校に通っていた時は授業も真面目に受けたし、宿題もその日にこなしていた。生真面目な性格をしているので、決まりは守ったし課題もきちんとこなしていた。あとは特別な勉強はしていない。


毎月、親に買ってもらうコミックボンボンを読むのが楽しみだった。900頁くらいある萬画雑誌は、僕を物語の世界に熱中させた。当時連載されていたのはロックマンXシリーズ、SDガンダムフルカラー劇場、武者頑駄無の武神輝羅鋼編、TVシリーズのガンダム、サイボーグクロちゃんなどなど、上げればきりが無いが、どの萬画も面白かった。ボンボンは僕に多大な影響を与えた。ガンプラやゲームなどのコンテツが紙面に掲載されていたのを夢中で読んでいた。他にもゲームにハマった。Gジェネ、スパロボ、バハムートラグーンなどが気に入っている。あとは当時加入していたWOWOWでいろいろなアニメを観ていた。こうして小学校に行かない間は、ゲーム、萬画、アニメに浸っていた。勉強はしていない。だけれども、萬画やアニメが僕にとっての学びの入り口になっていた。


アニメはWOWOWで放送されていた手塚治虫氏の作品を観ていたので、下手な学校に通うよりもよほど有意義だった。白黒の鉄腕アトム、ワンダースリー、リボンの騎士、ジャングル大帝、三つ目がとおる、などなど。どれも面白かった。もちろん、物語の全てを覚えているわけではないが、心の一隅を占めるものとして在るのだ。なお手塚治虫氏以外だとディズニーのダックテイルズやガンダムにハマっていた。僕の家ではアニメで年齢制限の無いものなら萌えアニメでもシリアスなアニメでもなんでもお茶の間で観る事ができた。ドラえもんとクレヨンしんちゃん、ブレンパワードなんかを観ていた。特にWOWOWで放送された作品はマイナーかもしれないが質が高かったように感じる。


さてさて、そんな感じでときに昼夜逆転しつつ、担任が家庭訪問に来て親と話をしていくのが終わるのを二階で待ってたりとか、まあそんなこともありつつ、ゲーム、萬画、アニメで小学生時代を過ごした。


そんな勉強もろくにしてないキムラ少年は中学からは学校に通うようになって成績も取って高専へと進学することになる。学校に通う気になった理由も僕はよく思い出せない。初めは行く気が無かったはずなのだが・・・


ちなみに再び学校に通いだしたを見て「あいつは成長した」とかぬかした小学校の教師が居たらしいが、そいつは解っていない。学校に行かないことが人生の落ち込みや躓きであり、学校に行くことでそこから立ち上がったとかいう考え方は大きな間違いである。学校に通うことに価値があろうか?無い!無いのだ!よって不登校だった少年が再び学校に通い出したからといって特別な事はなにもないのだ。学校に通うことは重要じゃない。何を学ぶか、人としてどう在るか、そういったことを考える事が重要であり、盲目的に学校に通い、それでお勉強した気になっているのならとんでもない勘違いである。


まあ、何はともあれ、今不登校の君よ、何も気にすることはない。人生なるようになる。それでも生きなければならないのだから。

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