しらばっくれんじゃねえよ
「しらばっくれんじゃねえよ」
地上から、
二十メートル程離れた足場の上で、
声が聞こえた。
(この足場は私が作ったものなのに、
彼はその私に言ったのだ)
「しらばっくれんじゃねえよ」
と。
地上二十メートルから見える景色
田畑(荒地)
アパート(とマンションの違いが分かりません)
パチンコ屋(私はこの店の食堂が好きだった)
量販店(昼間、私はカツ丼を二九八円で買った)
この男をちょっとだけ、
空へ向かって押してみる
「なにすんだおい」
と、
強めに肩を、殴られる
(この時、私は地面に向かって落下する男の描く
キレイな直線を思い浮かべて少しだけ笑っていたが、
落下した男の顔は、私だった)
私は精一杯の謝罪の気持ちもあって、何度も何度も頭を垂れて「すみません」を繰り返した。
男が地上へ降りた頃
私はもう十メートルばかり足場を上った。
眩しさに、腰が震える。
お前ばかりが眩しくも輝き、定時に帰るのが
気にくわん。
太陽を前に
私は、
ひしひしと、
歯ぎしりをした。
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