第140話 愛くるしい小ゴーレム

 レイジが地獄の特訓を受けていた頃、僕は小ゴーレムの改良に勤しんでいた。ヒーナにも指摘されたが、混戦状態になると手も足も出なくなるのを何とかしたい。しかし、大改造は時間が掛かるし、材料も無いので、何とか魔法制御符号の変更で済ませたいと思って思案していた。


「ねぇ、どう? 」

とヒーナがやって来た。


「魔法制御符号の変更で何とかならないかと考えているだけどね。ファイヤフレームを小さくして出すとか、武術家のように戦わせるとか。でもどれもダメなんだよね」

と僕は椅子に座り、足を揺らして考えながら答えた。


「まあ、小ゴーレム君は武術って感じじゃ無いわね。三頭身だし、手足短いし。お腹はプックリして、小さくて可愛い感じだし」

とヒーナは、一体の小ゴーレムを持ち上げて話した。


 小ゴーレムは、口を開けて笑いながら、右手を上げて、ヒーナに挨拶した。


「この愛くるしい可愛らしさも、武器といえば武器だけど、魔物には効果ないわね。ナウムさんになら効きそうだけど」

と小ゴーレムをぎゅーと抱きしめて言った。


 僕はヒーナが小ゴーレムを抱きしめているのを見て何か、アイデアが浮かびそうな気がした。


「そうだ、小ゴーレムが重くなったらどうだろう? 元々、土木作業をする時、自分の重さが変わるように魔法制御符号が組まれている」

とヒーナに聞いた。


「重くなったら? 何それ、それで戦闘に使えるの?」

とヒーナは、小ゴーレムを前に抱えて、僕の方に向けて聞いていた。小ゴーレムは、口を開けて笑っている。


「ちょっと、待ってね」

と他の小ゴーレムの魔法制御符号を書き換えながら、


「そういえばレイジはどうなの?」

と怪我の看護をしていたヒーナに聞いた。


「面白い子よ。どんなに気絶させられても、起きると『頑張ります』と言うのよ。ガッツはあるわね。でも、何と無く悲しみがあるわ。それが邪魔する時があるみたい」

とヒーナは、小ゴーレムを自分に向けて、語りかけるよに喋った。


「えっ、気絶? それって、ちょっとやり過ぎじゃないの? 」

と僕は、若干、上の空で符号を書き換えながら答えた。


「だから面白い子なのよ。ところで、陛下って、なんか人当たりと言うか、なんか変ったわよね」

とゴーレムの右手を持って揺らしながら、今度はヒーナが僕に質問して来た。


「ああ、マリオリさんに寄れば、『人たらし』がより強力なったとか言っていたな。威徳とか言っていたっけ。ん?、ここは、………」

と途中まで話した所で、魔法制御符号の改良に集中してしまった。


「えっ、何それ」

「………」

「ねぇ、ってば。人の話を上の空で聴かないでってば」

と怒られてしまった。


「すみませんでした。できた」

と戯けて謝った。


 ヒーナは、まだ、何か言いたげだったが、彼女が持っている小ゴーレムに転送して、

「2倍に重くなれ」

と小ゴーレムに命じると、


「うわ、何、これ」

とヒーナは、小ゴーレムを落とさない様に持った手を伸ばして、腰を屈んだ。


「どう?」

と僕はヒーナに聞いた。


「突然、重くなれば、驚くけど、魔物が小ゴーレムを抱えて、『可愛い』ってする訳ないわ」

と重くなった小ゴーレムをユックリと置いて、抗議と非難を含めて訴えて来た。


「いやいや、小ゴーレムが抱きつくのさ。それも集団で。そして重くなる。拘束水のように」

とヒーナに説明した。


「へー、どのくらいの重さになるの?」

とちょっと、興味が沸いたようだ。


「二万倍くらい、馬十頭分の重さ位かな。それ以上だと自分の重さで壊れてしまうから、それが限界かな。もちろん、その重さになっても、しがみ付くだけの腕力はあるよ」


「この大きさで、馬十頭分の重さ? それは凄いわね」

とヒーナは感心したように、腕を組みながら答えた。


「軽くもなるよ。普段の五千分一位にもなる。羽のような軽さだ」

と僕は胸を張って答えた。


 続けて、

「羽のように舞い、岩のように重くなる。名付けて、体重変化攻撃」

と僕はドヤ顔で言ったが、

「名前は、まんまじゃない。ダサいわね」

と言われてしまった。

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