第68話 持つべきものは友


「円陣を組め」

 

 三日後、もう少しでロン大河という時に、大規模な軽騎兵と今度は魔法使いの襲撃を受けた。


 軽騎兵、数十騎が鋒矢の陣で突撃してきた。


 僕は空気壁を厚くして顕現させる。しかし最初の数騎がぶつかったあと、後は見事に避けて後ろに戻る。


 つぎに拘束水を降らしたが、これも数騎のみで避けていく。


「敵ながらあっぱれな騎乗技術だ」

とレオナが感心している。


 敵の魔法使いが、長い提唱を掛けているのが判る。


 上空の術式から診て、メテオフォールだろう。


‘あんな、遅い術式で、僕をバカにしているのだろうか’


 僕は、魔法使いのいる辺りに落雷の術式を出して、雷を落とした。


 軽騎兵は、周辺から合流しているらしく、数が増えていく。


 今度は、車懸りの陣で攻め寄せてきた。


「僕が命ずる。虚空に錦冠菊の陣を顕現し、彼の陣をくぐる矢を無数の光の矢へ変質し、敵を撃て」

 

 弓手とは打ち合わせていたので、錦冠菊の陣に弓手達が矢を射掛け、多量の光の矢を発生させた。大部分の軽騎兵達はハリネズミになって、地に伏せた。


「凄い」

とレオナが、つい口にしていた。


 それでも、空気壁を避けて数十騎が、円陣に向かって突進してくる。


 僕は、時空矢で応戦し、次々と敵を倒していく。


「うーん、流石、陛下の弟君……これは、拙者も負けてはおれぬ」

レオナは、円陣から出て正面からの騎士の前に立った。


 槍を低く構えた。

 先頭の騎士が剣を構え疾駆してくる。

 そして剣を振りかぶったとき、それより早く、槍が疾風の如く騎士の腹を突いた。


 次に向かってくる馬の足を払い、更に次の馬上の騎士を刺し落とし、馬を奪って騎乗で槍を構えて突進した。すると、布をハサミで裂いていくが如く敵を分断していった。


 不意に左側の騎士が奇妙な倒れ方をした。一直線に、強引に引き倒されていくかと思えば、馬の頭ごと水平に切断される。まるで、草を鎌で刈るがごとく、バタバタと倒れていく。


「アーノルド様、只今参上、へへへっ」

と変な言上をして、アーノルドが現れた。


 右側は、馬上に何かの残像が現れたかと思えば、騎士がバタと落馬していく。その残像が近づいて来る頃には、御するものを失った馬が出鱈目に走っていた。


「ご主人様、ご無事で何よりです」

とシェリーが涼しい顔をして、僕のまえに立っていた。


「アーノルド、シェリー、来てくれたんだね」

と僕は喜びの声をあげた。


「ちっちっちっ、あるじあるじへの文句は、こいつらの後だ」

アーノルドが指を立てて横に振りながら言った。


 その後ろから騎馬が一騎突進してきたが、アーノルドは振り返りもせず、竜牙重力大剣を上から回すように振って、潰してしまった。


「解った」

と僕は嬉しくなって言った。


   ◇ ◇ ◇


「さてと、あるじ、怪我ねぇか?」

アーノルドが笑いながら、近づいてきた。


 僕は、

「ああ、大丈夫だ」


 ゴツとゲンコツを落とされた。


「ごめん」

と僕は謝った。


「シェリーが、心配していたぞ」

「悪かった」


「で、奴を殺ったか?」

「ああ、殺った。シリウスの仇を討ってしまって、ごめん」


「いや、気にするな。まだ残っているしな」

「そうだな」


 二人で肩を抱き合って、あの悲劇の日のことを思い出していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る