第67話 避難隊
避難隊の後ろから、数十本の矢が飛んでくる。
防衛魔法を盾に防ごうと試みるが、数本がその間を掻い潜り、徒歩の市民に当たった。
避難隊側も応戦の魔法を繰り出したり、矢を射たり、メリルキンが聖素弾を撃ったりした。しかし敵は馬の扱いが巧みで、数が多く、非戦闘員の多い避難隊は劣勢だった。
「円陣を組め、コロン車から、モックを外して、市民とともに中に入れろ。戦闘員はなるべく多くの敵を撃て」
「魔法使いは、矢を止めよ」
とレオナ・クライムは、槍で指示しながら激を飛ばした。
「聖霊師様、円陣の中へ」
とメリルキンが聖霊師達をコロン車から下ろし、二人を抱えて、円陣へ連れて行った。
双子の聖霊師は、円陣の中心に行き、回復魔法を発して味方の怪我をすべて直してしまった。
そして、レオナに
「錬金術師のジェームズがこちらに向かっておる。しばし踏ん張れ」「踏ん張れ」
「それは心強い」
レオナは、ジェームズの力量は直接、見てはいない。しかしシェリーやアーノルドの主人で錬金術の世界では天才と言われた男に期待したい思いだった。
◇ ◇ ◇
爆発音と馬の嘶き、馬蹄の音が聞こえる。多分、避難隊が、軽騎兵に襲われている。僕とヒーナはゆっくりと近づき、状況を確認した。
そこは、森が途切れた広場で、こちらからは緩やかに下坂になっている。この広場の中央辺りで、円陣を組んだコロン車の周りを、煩い蝿のように軽騎兵が回っている。
僕はヒーナに向いて頷いた。するとヒーナも頷いた
僕は、コロン車の円陣の周りの地面を流動化する術を掛けて、馬をひっくり返し、馬上の人属を流動化した地面に沈めて身動きを取れなくした。
「どこかに錬金術師がいるぞ! 探せ!」
と軽騎兵のリーダーらしき者が指示を出している。
その直後、リーダーの頭には矢が生えて絶命した。
配下の騎士たちは少し狼狽えたが、
「探せ、探せ」
と僕たちの方に向かってきた。
僕は、アルケミックコンパウンドボーを使って、時空矢を放ち、次々に敵を倒していった。それでも、数騎が近づいてきた。
僕はヒーナを守り、地面を沼に変えた。
数騎が沼にはまる。
しかし一騎、仲間の騎士を踏み越えて来る。
ヒーナを抱えて、横に飛ぶ。
騎士が馬首を巡らして、こっちに来ると思った瞬間、槍が胸から出てきて落馬した。
「ジェームズ様、大丈夫ですか?」
とレオナが駆けつけてくれた。
「ありがとう。皆は無事でしょうか」
と僕とヒーナは屈んで、お礼と皆の無事を確認した。
「市民数名が負傷しましたが、聖霊師様が直してくれました」
レオナも矢で狙われないように屈んで答えてくれた。
僕たちは、レオナに先導されて円陣に入った。
そして、レオナから敵の状況を聞いた。
「敵は三方にいる模様です。兎に角、馬の使い方が巧みで、魔法を発動しても、矢を射掛けても避けてしまいます」
とレオナが教えてくれた。
僕に任せてくれるよう頼んだあと、
「僕が命ずる。虚空に拘束水の陣を顕現し、拘束水にて敵を拘束せよ」
少し広範囲に拘束水を降らすために上空に大きな錬金陣を顕現させ、大量の雨を降らした。
悲鳴とも、叫び声ともわからない声がした後、うめき声に変わった。
「さっ、行きましょう。雨の辺りはまだ危険ですので、後ろの方から」
とレオナに告げた。
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