第43話 死人の洞窟

 魔術師が、その顔が判るところまで近づいてきた。年齢は僕ぐらいの男。茶系の髪の毛に探検家の服装だ。


「いやー、助かった。カービン・クロファイルです。実は私、探検家の端くれでして、この奥にある聖霊樹について研究しているものです」


 ‘ありゃ、同じ目的だ’


「雑貨商で錬金術師のジェームズ・ダベンポートです。僕たちも聖霊樹について調査、採掘しに来た者です。ところでネクロマンサーと言うのは?」


「どうも、死体をここに運んで、アンデッド化しているのですよ。さっきの広場で、術をかけているところに出くわしてしまって、あの通りです」


 この森は、アンデッドが、もともと多いので、そのような禁忌の秘術を行っても、余り目立たないのは確かだ。


「僕たちも、聖霊樹のところに行くのですが、採掘ですか?」

とちょっと気になるので、聞いてみた。


「いえ、そこにあることを、文献としてまとめたいだけです。あなたは錬金術師ということなので素材集めですか?」


 隠しても判ってしまうことなので

「そうです」


 こんな森に領有権などない。一般的に採掘権は、その場所で採掘事業をするものに優先権がある。つまり、採掘事業がされていなければ、素材を取ることは問題にならない。


 ‘しかし、文献に書かれてしまうと誰かがくるかもしれないな’

などと、商人ぽいことを考えていたが、シェリーが


“特に、怪しい者はいませんが、ネクロマンサーが死体復活の儀式をしていたのは、確かなようです。”

“一応、真名模様、調べてくれないかな。この魔術師のものも”

“解りました”


「文献に書く場合は正確な位置は、ぼかしますよ。元々そうする予定でしたから」


’まあ、余り変わらないけどね。僕たちは、過去の文献から、行こうとしているくらいなのだから’

と考えているとシェリーから、

“真名模様は、あの犯人のものはありませんでした”

“了解”


「まあ、ご一緒しましょうか。商売の話は無事に戻ってからということで」


と僕は話した。


 その魔術師も同行することにした。


 今度は聖霊師から、

“真名模様はどうじゃった?”

と聞いてきた。


“問題ないです。少なくとも、土の槍の男のものとは違いました”

“そうか、だが、僅かじゃが、この男の心が揺れておる。お主に対する恐怖と憎しみじゃ。気を許すな”

“解りました”


 僕は、シェリーとアーノルドにも魔法通信で話しておいた。


 そこから半日、周囲に放った小ゴーレムが洞窟を見つけた。


「錬金術師ってのは、そういった魔法具が作れるのが良いですよね。魔術師はその点、ちょっとな」

と言ってきた。


 上位の魔法使いなら、意識を飛ばすか、獣を使って同じようなことができるのだが。まあ、この男が上位なら、アンデッドに対しては範囲魔法を使っていただろうけど。


 洞窟の入り口を見つけた。小ゴーレムが光りながら先頭を進んでいく。


 腐った匂いが段々とキツくなってきた。アンデッドが居るのだろう。


 僕は所々で、清浄な空気へ転換する術を掛けていった。


 アンデッドの魔犬が数匹出てきたが、これは、メリルキンが聖霊弾でふっ飛ばしていった。


 少し広い場所に出た。


 何やら不気味な音と腐った匂い。瘴気も混じっている。


 空中から、氷の矢が放たれた。僕は性質を変換して、蒸発させた。小ゴーレムの目が一斉に空中を照らす。


 お約束のワイトだ。三体いるな、下にもお約束のアンデッドがゴボゴボと土の中から出てくる。


 僕は、地面に八本の矢を立てて、八芒星を書いて、アンデッドを土もろとも鉱物化して出てこれないようにし、ワイトは、聖霊師が浄化の魔法陣で消し去った。

 残った、アンデッドは、アーノルドとシェリー、メリルキン、そして小ゴーレムが吹き飛ばして行った。


 魔術師も一応、ファイアボールで応戦していた。

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