第44話 瘴気の正体
下へ、続く道を見つけたが、瘴気が奥から漂ってくるのがすぐに判ったかった。
小ゴーレムを三体を先に先行させて、慎重に進んだ。進むに連れて、だんだんと瘴気が強くなる。そのため、頻繁に清浄な空気に転換をしないと危ない状況だ。
進んでいくと、奥が見えないくらい、瘴気が強くなってきた。危険なので、小ゴーレムだけ行かせた。暫くして小ゴーレムから反応が帰ってきた。それによると、かなり大きな何かがいるらしい。
一度小ゴーレムを戻して、対策を練る必要がある。
「さて、あの濃すぎる瘴気を何とかしないと、進むことができないな」
と僕は対策が思いつかないため、口に出して言ってみた。
アーノルドが、大剣を振りながら、
「
「流石に難しいな」
「風魔法で、追い出してみてはどうでしょうか?」
とシェリーが提案してくれた。アーノルドのように、『考える事は任せた』でないところが嬉しい。
「入り口が一つしか無いから、風で押しても難しい。中から外に向けて風を吹かせないと、瘴気は出せないだろう」
と僕が、顎を触って思案していると、カービンが手を上げた。
皆が一斉にカービンに注目した。
「私、風紋石を持っています。これで、中から風を吹かせられないでしょうか?」
カービンが、ショルダーバックから石を取り出しながら提案してきた。
シェリーがさり気なく僕に近づき、カービンの後ろで、アーノルドが背中を向けながら、聞き耳を立てている。
カービンが出してきた石は、少し緑色で表面に風の魔術紋が書かれている。
「いいアイデアですね。ちょっと見せてください」
と風紋石を受け取り、息を吹く掛けた。すると辺りに風が起こった。
そして僕は続けて、
「少し錬金術のテイストを効かせて、風を強くしておきますね」
と石の周りに指で八芒星を描き、錬金陣を出して少し加工した。
カービンの視線を感じながら。
◇ ◇ ◇
小ゴーレムに風紋石を洞窟の奥に持って行かせ、着いたところで、風紋石を発動するようにした。
瘴気が洞窟入り口から出てくるので、僕たちは少し離れたところに移動して、状況を見守っていると、洞窟からゴーっと音がし始めて、黒い不気味な煙が出始めた。
周りの木々が枯れそうになったが、聖霊師が杖を上下にして励ましていた。
一時間くらい経つと、黒い煙が無くなってきたので、再び洞窟の中に入って行った。
照明の錬金陣を発して、中を明るくした。
すると、さっきは瘴気で見えなかった最奥の所にキラキラ光る柱のようなものが見える。
「あれが、千年聖霊樹でしょうか?」
とシェリーが呟いたが、何か違和感を感じたようだ。
続けて、僕に向かって、
「ご主人様、何か居ます」
光る柱の近くの、何かの塊が動き始めた。僕はすぐに瘴気の正体は、あれだと直感した。
ゾンビ・ドラゴンのようだ。
もう相当、前に死んでいるはずなのに、中途半端に肉体が生きながらえている。
すると聖霊師が哀れんで、
「土竜のなれの果てじゃ。何とかして遣りたいがの。何かに囚われすぎて浄化は難しいの」「難しいの」
「ミソルバで、ドラゴンと念話したようにやってみたけど、このドランゴは駄目ですね。たぶん言葉も、そもそも、何に囚われているのかも解らな分からなくなっていると思います」
と僕は答えた。双子の聖霊師の顔が沈んでいる。
「主、あまり、悠長にしてられねぇ見てぇだぜ。こっちに気づいたようだ」
続けて、アーノルドは、
「シェリー、こいつはお前には無理だろう。結界で
シェリーの掌での攻撃では、ゾンビドラゴンに触ってしまい、自分が侵されてしまうからだ。そこはシェリーも心得ていて、
「解ったわ」
と珍しく、素直にアーノルドの忠告を聞いた。
僕は、風紋石を最大限にして、洞窟から瘴気を追い出すようにした。
ゾンビドラゴンが、ブレスを吐くために息を吸い出した。
アーノルドが横に走り、竜牙重力大剣を上段の構えから切り下ろし、重力波をゾンビ・ドラゴンに放った。
頭が押さえつけられ、ゾンビ・ドラゴンの吸気が途中で止まった。ブレスは失敗したようだ。そして、アーノルドを狙って、突進し始めた。アーノルドは横に走り、直撃を剣で防いだ。
今度は、テールアタックを僕たちに仕掛けてきたが、シェリーの玄武結界で、その攻撃は軌道がずれた。
“ジェームズ、魔術師の目をごまかせるか判らんが、我等が浄化陣を張ったところに効果的な錬金陣を張るのじゃ“
双子の聖霊師は、オクタエダルの忠告に従って、僕が力を制限していることを理解していた。
“分解りかりました”
双子の聖霊師は、向かい合いって、浄化陣の祈りを捧げ始めた。その声は、この洞窟の中に響き渡る歌のように聞こた。
浄化陣が発現したところに、八本の矢を放ち、
「僕が命ずる。大地に暗黒の陣を顕現し、大地の重力を五倍にし、そこにあるものを大地に押さえつけよ」
となるべく小声で言った。
重力も大きくしすぎると、洞窟の天井が持つかどうか判らない。
ゾンビ・ドラゴンは、明らかに動きが遅くなった。テールアタックとブレスはできないだろう。アーノルドは、ドラゴンの周りを動き回り、錬金陣から出ないように誘導していた。
ゾンビ・ドラゴンの動きが遅くなったのを見ていた、カービンが、また手を上げた。
シェリーは、またさり気なく僕に近づく。
「腐肉草の種がありますが、これが活用できないでしょうか?」
それを聞いて、
「良いアイデアですね。聖霊師様、腐肉草の成長を早めることはできますか?」
「うむ、可能じゃ」「じゃ」
僕は、腐肉草の袋をもらい、顕現させた矢にくくりつけて、
「メリルキンさん、矢でこれを飛ばすので、ドラゴンの上辺りで聖霊弾で袋だけ破ける?」
「お安い御用」
僕は、矢を放った。メリルキンさんが聖霊弾で袋を破いて、腐肉草がドラゴンに降りかかった。
それを見て、双子の聖霊師が、杖を上下にして腐肉草の成長を早めた。
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