第25話 誕生

―――少し、広く薄暗い研究室に八つの聖石のライトが灯っている。朝の光は分厚いカーテンで遮られ、ライトが照らした、大きなガラスでできた樽の辺りだけが明るい。中は透明な緑色の液体で満たされて、その上に賢者の石が空中に浮いて、不思議な光を放ちながら、ゆっくりと回っている―――


 その樽に僕の血を一滴いれて、呪文を唱え始める。賢者の石の光が強くなった。


「僕が命ずる。今ここに生命を創造する原初の世界を作り、僕が命ずるままに、生命を創造せよ。即ち……」


 僕は、ライトを頂点とした八芒星を顕現させた。ガラスの樽の中の僕の血液は一度溶解し、アミノ酸から、小さな細胞、魚、両生類……そして人属へと、創造と進化が起きていた。


 六時間に渡って、呪文を唱え続け、ホモンクルスの創造を行った。


 そして、樽の中には僕と同じくらいの青年がいた。膝を抱えて目をつむり、まだ眠っている。

 僕はゆっくりと術を解き疲れて椅子に座った。


「凄いわ、あんなに長い間、集中力を切らさずに呪文を唱えることができるなんて信じられない」

とヒーナが少し離れた場所から声を上げていた。


 多分成功した。脳波のシンクロ度は申し分ない。

うーん素晴らしいと自画自賛して、ニヤニヤしていたが、


「えっ! えーっ、母上 何を?」

僕は突然の光景に声を出してしまった。


 光る魔法虫が飛んできて、樽の壁に止まり、染み込むようにガラスを通り抜けた。


 そして今、創造したホモンクルスの胸の中に入っていった。


 すると、強い光がホモンクルスから発した。

 目が眩んでしまい、元に戻るのに時間がかかった。

 少し離れたところにいたヒーナが、先に見えるようになり、僕の横に来た。


 そして、


「あっ、あれ、えー、ジェームズあれ、」

と訳のわからないことを言っていた。


 そして僕もようやく見えるようになり、

「えっ、えっ、なに、えーつ」

と僕も訳のわからないこと口走ってしまった。


 ガラスの樽の中には、長い銀髪でスレンダーなエルフ族に似ているが耳は長くない女性が全裸で浮遊していた。そしてその女性の胸の辺りは仄かに光っていた。


 しばし、呆然としてたが、脳波シンクロ率は、さっきより更に増しているのがハッキリとわかる。いや、僕の脳波、そのもので違いを全く感じない。


 母上がホモンクルスを依り代にされたのか。


 ホモンクルスが目を開けて、覚醒したようである。

 そして、僕を見て嬉しそうに微笑んだ。


「ちょっと、これ、どうなっているのか解らないけど、あんまり見つめるじゃないの!」

と言ってヒーナは僕の目を押さえた。


 でも僕には全く異性という感じはなかった。むしろ、子供の頃に感じた母上の雰囲気を感じていた。


 少しずつ液体を抜く間に名前を考えた。マリーは流石にな……考えているうちに液体が抜けて、はしごを使ってヒーナが先に入り、大きなタオルを彼女に巻いてくれた。


 そんな感じで少し時間が経って、僕はホモンクルスにシェリーと命名することにした。


 そして大図書館へ、接続した直後から普通に喋れるようになった。


「君の名前はシェリーだよ」

「はじめまして、ご主人様」

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