第22話 鉄槌を下す
「お願い、あんたの女になるから、あいつには渡さないで、お願いだから」
俺の腕の中の、村から掻っ攫ってきた女が懇願してきた。
あいつと言うは、ゴブリンロード。ここに来て既に三人の女を、玩具にして殺している。四人目も人形みたいになっている。もうだめだろう。
ゴブリンロードは、体がでかい上に激しすぎて、それで果てることがない。そのために、犠牲者は、体が裂けて、死んでしまうのだ。普通のゴブリン達は、あそこまで、でかくは無いが、果てしない上に集団で襲うので、やはり女は死んでしまう。
「おい、ゴブリンロード、こいつも良いぜ」
「モウイイノカ、ヒトゾクハ、タンパクダナ」
「いやー、止めて、お願だから、ギャーーーー」
こいつと盗賊を組んでから長いので、もう慣れっこになった。
ゴブリンには、交尾に関して羞恥心は全く無い。三度の飯と変わらないのである。食べながら会議をするのと変わらない。
「そろそろ、この辺りの村も狩り尽くしたからな、別のところへ移る」
俺たち人属が旅人や魔物狩猟者のふりをして門を開けさせ、ゴブリンが突っ込む。後は、金目のものは俺たちでいただき、人属はゴブリンがいただく。ゴブリンが殆どの人属を殺して、喰ってしまうので、噂が広がりにくいのだ。
「おい、聞いているのか? 連れてきた村人を処理するのに、どのくらいかかるのだ?」
「二ニチグライデ、ゼンインヤル」
「あっそ。それから、女は先にこっちに回せよ。お前らの後じゃ、駄目だからな。子供と男は勝手にしろ」
「ワカッタ、ギヒギヒギヒギヒ」
さっきの女、後一時間もつかな。
◇ ◇ ◇
僕は何重にも結界と錬金術の罠を張り、小ゴーレムを守備において、聖霊師と生存者をコロン車に乗せて待たせておくことにした。
そして追跡を開始して間もなく、先に出した小ゴーレムから連絡が入った。そう遠くない山の麓だ。
最初結界を用心しながら進んでいったが、魔物のゴブリンがいるから、奴らは魔物除け結界は張れない。それでも注意深く進んで行くと、切り立った崖の下に拉致された人たちがいて、ゴブリンが見張っている。そこから少し離れたところに人属、ゴブリン、体格の大きなゴブリンロードが居る。その周辺に何人か、横たわっているが動く気配はない。
篝火と薪で周りは赤くなっている。月が出て、周りは比較的明るい。魔物とそれと同程度に邪悪な人属の影が揺れている。しかし横たわった人の影は動くことはなかった。
「ご主人様、もう私は我慢なりません」
ここに来て、シェリーの怒りは爆発そうだ。すでに長い銀髪を紐でまとめて、戦闘態勢である。怒りで爆発しそうなのは僕もアーノルドも同じだ。
「待て、闇雲に突っ込むと人質が危ない。まず、賊の頭とゴブリンロードの周りに空気壁を作って、こっちと分断する。アーノルドとシェリーはゴブリンロードと取り巻きを殺ってくれ。こっちの見張りを殺ったら、僕も合流する」
アーノルドとシェリーは頷き、ゴブリンロードがいる方に向かった。僕は頃合いを見て、錬金術で、普通の人には超えられない高さの空気壁を作った。
僕は、スコープで見張りのゴブリンをマークして、次々と時空矢で射ぬいた。
シェリーとアーノルドは、伏せながら、ゆっくり近づいて行った。そしてシェリーに男たちの声が聞こえた。
「全くゴブリンは、ほんと絶倫だな。あれじゃ、女はすぐに壊れるな」
「だからよ、ゴブリンがやる前に、俺たちで味見しないとだめだぜ」
「ゴブリンは、女子供お構いなしだから、あれじゃ、すぐ死んじ……」
その男たちがニヤニヤして言い終わる前に頭が爆発していた。目は明後日な方向を向き、鼻と片方の耳から血を出していた。男たちの間にシェリーが現れ、両手をそれぞれの男の頭に当てている。当てた手の反対側の頭は無くなっていた。
シェリーは銀色の髪を後ろでしばり、表情はなく、冷たい目をしている。そして、女性に乱暴しているゴブリンを蹴り、仰向けに倒れているところに、股間を踏み潰してしまった。そして、次々瞬間移動し、ゴブリンを蹴り倒し同様に股間を踏み潰した。
アーノルドは、ゴブリンロードと賊の親分らしき奴らのところに、何もない草原を行くがごとく歩いていた。向かってくる人属やゴブリンは皆、竜牙重力大剣で、ふっ飛ばされ、潰れていく。
「誰だお前は? 死にたいのか?」
と賊の頭らしき男が怒鳴ってきた。アーノルドはそれには答えず、
「おめえが、頭だな。おめえには、
と賊の頭に言った。そしてゴブリンロードに向かって、
「くそ汚らしい、お前、何処を切られたい?」
と詰問している横から、魔術師がファイヤフレームを飛ばしてきた。アーノルドは、竜牙重力大剣を一閃させてそれを弾き、
「邪魔すんじゃね!」
と大剣を上段から下へ振った。大剣から発した引力重力波が魔術師の方に向かっていき、そして潰した。周辺にいた人属もその引力に引き込まれ、お互いにぶつかり合い、肉団子になってしまった。
ゴブリンロードが奇声を上げて、棍棒をアーノルドの頭に向かって振り下ろす。
大剣を斜めに構えて避け、大剣を返して棍棒を持った右の指だけを切断した。
「あーん、何言ってのか解んねぇな。だから、何処を切られたい?」
と言って、大剣を一閃し、左手の指を切り落とした。ゴブリンロードは、手をメチャクチャに振って来たが、そのたびに腕が短くなっていく。肘から下が無くなって、やっとゴブリンロードは激痛で尻もちをついた。
「おい、だから何処を切られたいだ?」
と言って、今度は足の指を突いて切った。
逃げようとしたので、膝から下をきって、逃げられないようにした。
「おまえ、人属の言葉わかねぇのか?」
「ゴメンナサイ、ユルシテクダサイ」
と泣きながら言ってきた。今度は右耳が切り落とした。
「あー、俺の質問わかってる? わかねぇのなら、耳はいらんだろう」
と言って、左耳を切り落とした。
「ギヤー、コンナコトヲシテ、タダジャスマネェゾ」
とゴブリンロードは耳のあったところを、二の腕だけの腕でお抑えて、悪態をついた。
「その口もいらねぇな」
と言って、口に大剣を突っ込んで、舌を切った。
「ガガァー、キ、ビ、ヲ、キ、ッ、テ」
アーノルドは、賊の剣を拾って、ゴブリンロードの股間をぶっ刺した。ゴブリンロードが痛みで、前かがみになったところで、クビを落とした。
「おめぇのしてきたことからすりゃ、優しいよな」
アーノルドは、周りの犠牲者を、ちらっと見て言った。
ゴブリンは、シェリーに集団で襲いかかろうとする。ゴブリンは、仲間が死んでも他のゴブリンが攻撃し続ける。そこらの魔物狩猟者なら、これで殆どゴブリンに捕まり、乱暴され殺される。
しかし、シェリーの場合は、襲いかかろうとしても玄武結界で、速い攻撃は逸れ、瞬間で場所を移動してしまう。やっと一匹のゴブリンがシェリーの腰に取り付いた。
「汚い手で触るな!」
と言って足を強く踏みしめ発勁した。
そのゴブリンは背中に大穴が空いてしまった。シェリーは、体の何処からでも発勁できる。
そしてシェリーを取り囲んでたゴブリンの頭に矢が生えた。次々生えてゴブリンは一掃された。
賊の頭と数名の人属たちは、逃げ出した。そして賊の頭はつまずいた。股間を潰されて死んでいるゴブリンにつまずいたのだ。
「ひぃ、ひぃぇ」
と悲鳴を上げて走り出した。
賊の頭は走って、あの出鱈目な二人から少し離れホットしたが、突然、鼻や顔、体が何かにあたる。何もないのに硬い物に当たる。必死で壁つたいに出口を探すが見つからない。
すると暗がりで手下にぶつかり、お互い腰を抜かしそうになった。手下も壁つたいに回ってきたらしい。何かに取り囲まれ出口がないと思った時は冷や汗吹き出した。
シェリーは、横たわっている女性や子供のところを飛び回り生存者を探し回った。全員悲惨だった。
「かわいそうに、かわいそうに、かわいそうに」
そればかりを言いながら、遺体を一箇所に集め始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます