最終話3 ふたつめのステラ
ㅤ桜吹雪の舞う中、願に会えた。願はこちらに振り返って笑った。
「あらためて。助けてくれて、ありがとう」
「こちらこそ」
ㅤ何度も蘇るような桜は美しくて、なぜか願のことも、美しく見える。
「一緒に見たかったんだ」
ㅤそう、ぼくは言う。
「吹雪いてるときに?」
ㅤそう、願が聞く。
「うん」
ㅤぼくはうなずく。
「そういえばこんな景色、夢で見たかも」
ㅤ桜の方を願は見上げる。
「あ」
ㅤぼくは思わず声を
「なに?」
「ぼくも見た。今、思い出した」
ㅤこうなることはきっと運命だったんだろう。でも、この先のことはまだわからない。今ぼくたちの中にあるのは、これまでの夢と思い出だけ。
「そだ。日直一人になって、地味にめんどくさかったぞ」
「ごめんなさい。って、わたしが謝ることなのかな」
「謝ってほしいわけじゃない。ただ、一緒にやりたかったってだけ」
ㅤぼくの願いが叶うのはいつになるだろう。たぶんそのとき、願とぼくは死ぬ気がする。ぼくはなぜか、いつまでも願と一緒にいたいとは思わない。ただ、今一緒にいたいっていう気持ちが……やっぱいいや。
——すべては、星のように生まれ、星のように死ぬ。
ㅤそんな当たり前からはみ出したぼくたちは、まだここにいる。
「ひとりが嫌だって言ってた」
「え?」
「ぼくの夢に出てきた願が」
「夢、覚えてたの?」
「いや、願の日記を読んだとき思い出した」
ㅤもう、ひとりじゃない。ふたりの歴史をこれから始めるんだ。
「おいっす」
ㅤ陽太もまだ、ここにいる。太陽みたく輝いている。
「それじゃあ、行こう」
ㅤこの道の先に、ぼくたちはいない。ぼくたちが願いを叶えた先の未来は、どんなふうになっているだろう。
ㅤ悲劇はなくなってないかもしれないけど、桜のように繰り返す命の中で、幸せなときがありますように。
ㅤ落ちた花びらが願の頬につく。
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