最終話2 ひとつめのステラ

 ㅤ目を覚ました願。一方で、その人はその場に座り込んだ。


「そんなチカラがあれば、あの子も」


 ㅤその人曰く「あの子」は、星のチカラをろくに使わずに亡くなった。交通事故。その人を守るようにして。


 ㅤまだ意識がかすかにあったとき、そのチカラを使うようその人は話しかけた。それでもあの子は使わなかった。


 ㅤあの子の気持ちはわからないけど、いつか誰かにチカラを利用され、みんなのために生き続けるということを恐れたのかもしれない。それに、その人をとっさに守れたことで、気持ちが満たされたのかも。


 ㅤそれでもその人には、悔しさが残った。どうして自分のために、あの子が犠牲にならねばならなかったのかと。


 ㅤいつかあの子からもらった花は、不思議なほど咲き続けているのに。


 ㅤその人は、あの子のような悲劇を嫌った。でも結局それで、願を閉じ込めようとした。そうすれば、願いが叶うまで死ぬことはない。みんなの願いを叶えて、生き続けることになる。


 ㅤそんなのわがままだ。でもそんなチカラのおかげで、陽太は生き返ったし、ぼくは願との明日を描いた。こんな戦いで誰も死なずに済んだ。


「ところでさ。なんでその子はチカラが使えるのに、わざわざその身を犠牲にしたんだろ」


 ㅤ陽太が何気なく呟く。そういえば、仮にその人が事故にあっても、あの子がチカラを使えばその人は助かったはず。なのにわざわざ身をていして守ろうとしたのは……。


「フフッ。わたしはこれまで、何を研究してきたのだろう。そんな大事なことを見落として」


 ㅤ花が、その人の手のひらからこぼれた。枯れていく白いガーベラ。花言葉は希望。

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