第22話 夢の話
「よっ」
ㅤ家を出てすぐの通り、ガードレールの前に陽太が立っていた。
「なんでおるの」
「開口一番それかよ。まぁなんだ、休み明けの報告だ」
ㅤ陽太を右隣に学校へ向かう。報告か。こっちは特に何もできそうにないな。とりあえず聞いてみよう。
「すまんっ」
「え」
「色々調べようとしたんだが、満が言った通り何も進展しなかった。本も入手できなかったし、結局図書館行って調べるしかねぇ」
ㅤ
「ごめん、ぼくも」
「んぁっ?」
「特に何かチカラがついた気がしなくて、これじゃ願を助けられるかわからない」
ㅤぼくの話を聞くと陽太は頭を上げて、今度は一転、握りこぶしを空に掲げる。
「大丈夫だ!」
「そうなの?」
「オレの太陽のチカラはずぬけてる。満が不安なときはオレが助けになるぜ」
ㅤ陽太。周りの目とか、自分で言っちゃうところとか、恥ずかしい気もするけど、ありがたいよ。
「ぼくもがんばる」
「そんで願を助けてやらないとな」
ㅤ互いの意志を改めて確かめ合ったあと、しばし無言で歩いていく。その中で、陽太に伝えたいことがあったことを思い出した。
「そういえばこの前、夢について少し話しただろ?」
「ゆめ?」
「逃げる願の姿を見たって話」
「お、おぉ」
ㅤピンときているのか引いているのかよくわからない陽太の反応。構わず話を続ける。
「願とぼくは、同じ時に不思議な夢を見てるんだ。これって偶然だと思う?」
「偶然ってか、なんだそれ。どんな夢だよ」
「内容はともかく、夢の中でお互いに会ってるみたいなんだ」
「へえ。そりゃ偶然にしてはすごいな」
ㅤ夢の話を他人に真面目にするなんて、おかしいことかもしれない。ただそんなおかしな繋がりを信じて、願はぼくを信じてくれているかもしれない。ぼくもまた、星が掴まってしまったあの悪夢を迎えないように願を助けようとしてる。
ㅤそのことを何となく陽太にも伝えておきたかった。
「お前たちの夢とは違うけど、オレも何か夢を見てた気がしてきたぜ」
「へえ。どんな?」
「お前とダチになるとかなっ」
ㅤさすがの陽太でも恥ずかしかったのか、ぼくの左胸を小突いて走り出した。陽太の横には並ばない程度の駆け足でぼくも学校へ向かった。
ㅤ帰りには図書館に行くつもり。休みの間何もできなくて停滞してる感じだけど、願。必ず会いに向かうからな。
ㅤきっとあの桜はもう咲いている。
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