第21話 同じ景色

 ㅤ桜吹雪の舞う中、願に会えた。願はこちらに振り返って笑った。


「あらためて。助けてくれて、ありがとう」

「こちらこそ」


 ㅤ何度も蘇るような桜は美しくて、なぜか願のことも、美しく見える。


「一緒に見たかったんだ」

「吹雪いてるときに?」

「うん」

「そういえばこんな景色、夢で見たかも」

「あ」

「なに」

「ぼくも……」



 ㅤ朝。今日からまた学校が始まる。今何か夢を見てた気がするのに、何も覚えてない。前にもこんなことがあったような。でも、あのとき見た夢は、不思議なことに願の日記を読んで思い出した。


 ㅤ今回の夢もまた、何かをキッカケに思い出すかもしれない。


 ㅤしかし少し気が重い。陽太に謝らなくちゃいけない。自主練するなんて言ったものの、なかなか身につくチカラはなかった。まだ授業だったり、他人がやってるのを見ていると、出来そうな気がしてたのに。


 ㅤこんなんで学校に通っていけるか心配だ。願を助け出せるのか心配だ。


 ㅤそれでも行くしかない。不安がある方が、とっさのときに注意力が出るかもしれない。


 ㅤどうせいつかは死ぬんだ。怖くても助けに行こう。でも、願のチカラはそれすら変えられるのか?ㅤ 詳しいことはわからない。


 ㅤ研究者の本を調べようとしてるけど、その本にあれ以上詳しいことが載っているかもわからない。何かわかったところで、願の元にたどり着けるかも。


 ㅤわからないだらけの中を進んでいく。つもり。きっとまた願に会えることを信じて。

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