第19話 ルキンフォー
「あとな、自由にしていいのかって言うけど、そもそも誰かに捕まってるのがおかしいんだよ。あの子のチカラはあの子のもんなんだから」
ㅤ陽太による前回の話の続き。教室を出てぼくらは、職員室に向かい廊下を歩いていた。
ㅤ陽太の言うことは正しい。ぼくは少し、怖がっていた。そもそもヨームインなんていう得体の知れないやつに捕まってるかもしれないなんて、おかしいんだけど、もし願を解放したところで、そんなチカラを持った願をどうしたらいいのか。
ㅤでも、どうする必要もないんだろう。願は願だから。そんな個性をどうするかも願次第なんだ。そのためにもまず、願を探す。無事でいてほしい。
「着いたぜ」
「ああ」
「あの先生は、本当に信用できるんだろうな」
「たぶん」
ㅤノックして、ガラガラッと、扉を開ける。ぼくらが会いに来たのは、生の授業の先生。本当に信用できるかなんてわからないけど、直感では大丈夫。それにヨームインを知ってそうだから紹介してもらいに。逆に、深くは知らなさそうだから信用できるとも言える。
「用務員?」
「そう、ヨームイン。飼育小屋を
ㅤそう聞くと、先生は少しうつむいて、それから周りの先生方には聞こえないような小声でしゃべり始めた。
「実はだいぶ前に辞められたみたいなんだけど、それから私が時折見るようになってたの」
ㅤそれは初耳。ていうか、ますますマズイ予感。
「その方が辞められたのって、具体的にいつ頃ですか」
ㅤ隣に立つ陽太が質問する。
「梅雨に入る頃だった気がします。あと、声を少し静かにお願いします」
ㅤ願が学校を辞めた時期と一致する。もう完全に怪しい。次はぼくが質問する。
「先生はそのヨームインについて、何か知ってますか」
「話の感じでわかると思いますが、全く知りません。私は校長先生から説明を受けたくらいで」
ㅤ先生はそう言いながら首を振り、一度大きなため息をついてから、話を続ける。
「ウサギちゃんに何もなくてよかったですが、正直学校の対応には困惑しました」
ㅤ今度は先生の声が大きい。勝手にカメラをつけられたり、それを見る人が急にいなくなったりしたわけだから、大変だったと思う。それも、ヨームインは得体が知れない。
「ところで、どうして用務員の方を?」
「実は……」
「お仕事大変だろうなぁと思って、お疲れさま会をしようかと思って」
ㅤ自然と願のことについて話そうと思ったら、陽太にさえぎられた。さらに一緒に頭を下げさせられて、逃げるように職員室を後にした。
「なぁおい、そこまで話すこたぁねぇだろ」
「だって信用できそうじゃん」
「それとこれとは話が別。生の先生に言うことじゃなければ、死の先生に言うことでもない。それに大ごとにしたくねぇだろ」
ㅤまぁ確かに。でも結局、得られた手がかりとしては、ますますヨームインが怪しいってことくらい。
「校長先生に会いに行く?」
「それもダメだ。校長もグルくさい。今乗り込むには準備がなさすぎる」
ㅤぼくの問いに対して、陽太がいちいち正解らしき言葉を返す。もしかして、陽太は何か知っているのか……?
「悪いけど、何も知らんぞ。そんな目で見ても」
ㅤもうちょっと手がかりを探す必要がありそうだ。いつか夢で見た、願のチカラ。星のチカラについても調べたい。
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