第2章 満と陽太
第17話 星と月
「なんだそれ」
「わぁぃっ」
ㅤ陽太が机の前でノートを覗いて立っていた。ぼくは日記をだんだん真剣に読んでいったから突然の声にのけぞった。
「これ、願の日記だ」
「勝手に読んでいいのかよ」
「だって、机ん中に入ってたから」
「冗談。そんで何書いてんの。こっちからだと字が逆なんだよ」
ㅤぼくは陽太に、願がウサギを再生させたかもしれないこと、「助けて」で日記が終わっていることを、陽太に耳を近づかせて小声で伝えた。
「うーん」
ㅤ立ったまま腕組みして目を閉じる陽太。
「どう思う?」
ㅤぼくはもう、願のことが気になって仕方なくなっていた。
「あの子、そんなヤバイ子だったんか」
「やばいって失礼な」
ㅤ願はごくごく普通の、変な子だと思う。思っていた。
「いや、もしこれが本当だったらとんでもないことじゃねーの」
「うん。先生に相談しようか」
「アホゥ。先生なんて信用できるかい」
「そうなのか」
「願は誰かにチカラを知られたのかもしんない。そんなチカラを利用するとしたら大人だろ?」
ㅤそうなのかな。ていうか、一度頭の中を整理させてほしい。まず願は、本当にそんなチカラを持っていたのか?ㅤ ウサギを再生させるような。それって、死の授業のときに触れられてたやつだよな。
ㅤ確かにウサギが弱ってるところをぼくも見た。次見たときには元気になってた。それがそういうことなら説明がつく。願が帰り際、教室に戻ったのもこの日記を書くため?
ㅤ夢についてはちょっとわからない。ちょっとわからないっていうのは、ぼくと願の見た夢はなんか違うってこと。だって今、自分があの夜見た夢を思い出した。この日記を読んで思い出した。そんなことってある?
ㅤぼくの夢には、星と名乗る人が出てきた。願の夢には、月と名乗る人が出てきた。
ㅤぼくの夢には願、願の夢にはもしかして、ぼくが出てきた??
ㅤ相変わらず、教室の片隅の席に座るぼく。自分という存在がなんなのか、突然怖くなってきた。
「やばっ、先生来た。また帰りにな」
ㅤ陽太が自分の席にさっそうと戻っていく。呼び止めようにも声が出なかった。
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