第14話 世話係
「よっ、元気か」
ㅤそう言ってぼくの右肩に触れたのは陽太だった。ぼくは昼になってもぼーっと窓に映る斜線を見てた。それは見事なぼーっだったから、ぼーっとしてたことにも声をかけられてようやく気付いたくらいだった。
「お前たち、仲良かったよな」
「そう?」
「ほら今、誰って言ってないのに誰のことかわかってんじゃん」
ㅤそういえばそうか。確かにお前たちって言われただけ。あれ、じゃあ誰のこと言ってんだ?
「誰のこと?」
「いや願に決まってんじゃん。ショックのあまりか?ㅤ あの子が話してんの
ㅤぼくは願が先生に質問したところを見たことある。それはともかく、あれは仲良いって言えたのか。一緒に遊んだこともない。授業や日直を共にしただけ。そだ、これから席替えない限り日直自分一人じゃん。
「何かおかしいと思わないか」
「仕方ないよ」
「へ?」
「日直がんばるよ」
「そんなこと聞いてなくてさ。あの子、やめる素ぶりなんてあったか?」
ㅤ陽太に言われて、なぜか初めて願が学校をやめたことについて深く考え始めた。そして昨日のことを思い出す。願は帰り際、教室に忘れ物を取りに行った。これを今考えれば、荷物整理だったのかもしれないけど。丁寧に手を振った姿の意味もわかる。ただ、それまで何もなかったはず。授業も真面目に受けて。
ㅤわかりにくいことをする子ではあったけど、もし本当に昨日限りでやめるつもりだったら、そうあいさつしてくれたんじゃないかな。わからないけど、そんな気がする。
「おい、話聞いてる?」
「聞いてる。確かになかった気がするな」
「へえ」
「へえって」
「いやオレはそんなに知らないから。満がそう思うならやっぱおかしいだろ」
ㅤ陽太に言われるまで考えもしなかったけどな。でも、気になってきた。本人に確かめるのが一番早いかもしれない。
「帰りに願の家行ってみるよ」
「じゃあオレはそれを見送る」
「一緒に行かないんかい」
「オレが行っても仕方ないだろ」
「そうか?」
「ウサギみたいにさみしがってるのは満なんだから」
ㅤうるせえ。でも願に会ったら、ウサギの世話どうすんだよって文句くらい言ってやろうか。冗談言える空気だったら。
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