第11話 めんどくさいやつ

 ㅤ早く起きて登校したせいか、まだ教室は開いてなかった。職員室に鍵を取りに行ったところ、先生の数も少なく見えた。


 ㅤひとりの教室では、何しようと自由。かといってやることもないから自分の席に座る。と見せかけて、立ち上がり窓を開ける。そしてまた座る。


「おっ、今日早いな」

 ㅤ次に登校してきた陽太と軽くあいさつを交わす。陽太は初日以外一番に来てるらしい。初日は最短ルートを模索するのに少し時間がかかったとか。そんなどうでもいいやりとりをした。


 ㅤそれから時間が経っても、なかなか隣の席は埋まらなかった。ついにチャイムが鳴ったとき、慌てて願が教室に走り込んできた。


「おはよう」

「……おはよ」


 ㅤ願の息が切れてる。ゼーハー言って、肩を大きく上げ下げしながら席に着く。そんな様子がおかしくて、もうちょっと話しかけてみる。


「ギリセーフだったね」

「……うん」

「どうして遅れたの。寝坊?」

「うん、まぁ」


 ㅤ願はこっちを向かず、息を整えようと呼吸しながら下を向いて答える。そんな姿も新鮮で、めんどくさそうなのに構わず話しかける。


「昨日寝るの遅かったの」

「いや」

「遅くないのに寝坊したのね」

「いいじゃん」

「なんか夢でも見てたんだろ」

「ん」

「どんな夢?」

「もういいじゃん!」


 ㅤ突然ビタッと机を叩いて少し声を張った願。それでも朝の賑やかな教室の中ではそこまで響かず、片隅のやりとり。とりあえず怒らせてしまったことを謝る。


「ごめん、ごめん」

「……うん」

「なんか勝手に楽しくなっちゃって」

「え」


 ㅤよく考えたら、馴れ馴れしくしすぎちゃったかな。しかも走り込んできたところで。


「ふぅ。夢なら見たよ」

 ㅤ息を整えた願が、前を向いて呟く。

「でも忘れちゃった」

 ㅤ表情を変えずに続けて呟く。

「こっちも同じ」

 ㅤぼくも前を見て呟くと、願の視線がこっちに向いたのを感じた。

「願と違って早起きだったけど」

 ㅤからかうように言ったら、願がむっと頬を少し膨らませたのを感じた。

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