第10話 ひとりのエンディング

「起きて。満、起きて」

 ㅤ体を起こすとそこは戦場だった。崩壊した学校で、生徒みんながぼくらの方へ向かってくる。


「ほら、逃げるよ」

 ㅤぼくの手を掴むのは誰? ㅤガレキの間を駆ける足が痛い。背後からは炎や氷や雷などが向かってきては、ぼくらを追い越してく。なんとか避けれてるみたい。


「よかった、逃げれたね」

「きみは誰」

 ㅤ崩れた壁の影に隠れて聞いた。

「わたしは星よ」

「ほし?」

「みんなから狙われてるの。隠れなきゃ」

「じゃあ、どうしてぼくまで」

 ㅤその疑問には答えてもらえなかった。星はそっぽを向いてた。


「あっ!」

「ついに見つけたぞ」

「離して!」

 ㅤ星が後ろから肩を掴まれて、立ち上がりながら必死に逃げようと体を左右に振る。


「抵抗しても無駄だ。これで星のチカラはみんなのものだ」

 ㅤやめてやれっ! ㅤそう思っても体が動かない。ただどこかへ連れ去られていくのを、見送ることしかできない。


「ひとりじゃだめだった。ひとりが嫌だったのに!」

 ㅤ涙がふたつぶ弾け飛ぶ。星は離れて、どんどん小さくなってく。たとえその小さな光が、遠い世界をまばゆく照らすとしても。最後の叫びは、悲しそうだった。


 ㅤおしまい。



 ㅤうーん。暗闇の中で目を開けた。起き上がってカーテンを開けると朝日が差し込んでくる。何か夢を見てた気がするけど、何も覚えてない。


 ㅤ覚えてなくてもいいのが夢だよな。夢は夢で完結してるんだから。もし、夢にも世界があったりして、そこで良い思いができたとしても、目を開けたら関係ないんだからなぁ。それってちょっとさびしいな。


 ㅤ今はそんなに良い夢見たって感覚ないけど。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る