第8話 ふふっ

 ㅤ放課後にせいの授業の先生に連れられ、願と一緒に小屋へ来た。先生は胸に抱いたウサギを放す。ウサギは辺りをひょこひょこ歩き出す。


「先生も面倒見ますが、日直は帰る前にお世話してあげてください。監視カメラもあるから気をつけるように」


「カメラですか?」


 ㅤ願が先生にたずねる。珍しい気がする。その前に、また日直の仕事かよと思った。


「そう、コレ。ウサギの様子も見れるでしょうし、君らがサボったりするのもわかるので、気をつけてねぇ」


 ㅤ屋根の近くに設置されたカメラを指差し、今度はぼくら二人を指差し。ユーモアを交えて説明してくれる。


「ただ、私が設置したわけではなくて。カメラがウサギちゃんやみんなのストレスになるといけないからって話をしたこともあるんだけど」


 ㅤそう言って先生は頭をかいた。確かに、願と二人でウサギにエサをあげてるとこを誰かに見られるって考えたら。嫌な気もする。でもカメラがあれば、防げることとかもあるのかな?


 ㅤ願は先生の答えを聞いて、心なしかちょっとうつむいて見えた。願も見られるのが嫌なのか、ウサギのことを考えてるのか。妙に心配するところがあるから、後のことかもな。でもなかなかウサギの気持ちはわからん。ひょこひょこ歩いてニンジン噛んで。癒される。


「あれ。これは何ですか」

 ㅤあるものを掴んで願に負けじと先生に質問してみる。

「それはフンね」

「ふーん」

 ㅤ地面にそっと手離してから、掃除のレクチャーを受けた。手離すとき、願の笑った顔は見えなかった。ふふって声は聴こえた。

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