第7話 変な子
ㅤ黒板消しをクリーナーの上に乗せる。少しうるさい。願とのジャンケンに負けて、死の授業の後始末をした。日直ってやつはどうもめんどくさい。それに黒板消し二つあったら、二人でやれたのに。
ㅤ
ㅤチャイムが鳴る。席に着く。次の授業の先生が後ろ手に組んで教卓まで歩いて来る。
「それでは
ㅤこの授業も選択科目じゃない。それにしても死の後に生。順番が逆のような合ってるような。まぁいいか。そうだ。
「今度は教科書持ってるか?」
「あ、うん」
ㅤ願は机の中から教科書を取り出す。
「あ」
「それ死の教科書じゃん」
ㅤ慌てた様子で教科書を取り替える。てかさっき忘れてたのって勘違いだったんかい。そう心の中でつっこんで、机を元の位置に戻す。
「みなさん準備はできましたか。早速ですが、この生の授業では癒しの力を得ることができます。生きる上で癒しって大事ですよね」
ㅤメガネをかけた優しそうな先生は、そう話した後、突然教卓の上にあるものを手放す。
「どうも、ウサギちゃんです。というわけで、みなさんにはこのウサギを育ててもらって、生のチカラを学んでほしいと思います。くれぐれも、寂しがらせないように」
ㅤそして先生から順に回すようウサギを手渡された。もふもふ。とりあえず願に渡そう。怖がるかな?ㅤ と思ったら、案外ふつうに受け取ってからだを撫でる。こういうのってウサギにとって嬉しいのか迷惑なのかわかんないけど、確かに癒される気はするな。優しくしてあげたいね。
「さっきは……」
ㅤ願が手に抱くウサギを見ていたら、勝手にしゃべりだした。じゃない。願がしゃべってる。
「ありがとう」
「何かしたっけ」
「黒板。消すの見てた」
「あれはジャンケンだから。負けたら願だぞ」
「それと……」
「なに」
「教科書、見たよね」
ㅤ教科書? ㅤああ、忘れてたって勘違いしてたことか。そんなの仕方ないでしょ。何かの弾みで見つからなかったものが急に見つかるみたいな。
「ありがとって言いたくて」
ㅤ願はそう言うと、急に後ろを向いて、願の右隣の席の人にウサギを手渡す。
ㅤありがとって言いたくて?ㅤ何か歌のタイトルみたいな。違うね。どういうこと。ああ、こないだのお礼言うためにわざと忘れたふりしたみたいな。何だそれ。めんどくさーいの。
ㅤふつうに言えば済むことなのに。でもやっぱりそういうヤツなんだな。変な子だ。しかもわざわざ説明するなんて、変な子って思われたくないんだな。けど残念だったな。もうすでに、変な子扱いだ!
ㅤとか授業中に考えてる自分もだいぶ変な子だな。
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