vol.15 最終回 ~「恋はみずいろ」(1967) Paul Mauriat~

 稲作が盛んな田舎街に住んでいるので、田植えが始まる4月下旬から刈り入れ時の9月にかけて、“四季”とはまた別の季節感を味わうことができる。

 僕がもっとも一番美しい田園風景だと思うのは、4月の中旬からの1~2週間と、きわめて期間が短い。この期間は、代掻しろかきの時期で、田植え前の水田に水がはられている期間だ。

 この田園風景を、ある程度の標高のある地点から見下ろすと、まるで、視界一帯がまるで“鏡”のように見える。

 

 丁度、そんな限られた期間の、限られた眺望ポイントに出くわした。

 高台を通る田舎道から見えるのは、全面、鏡のような水田とその奥の夕方に映える海だ。

 2種類の鏡は、水色とオレンジ色をそれぞれ反射させて、僕に思わず、ブレーキを踏ませた。



「恋はみずいろ」by Paul Mauriat

 原題は仏語で「L'amour est bleu」、英語で「Love is blue」という。

 もともとは、フランスの作曲家アンドレ・ポップの作曲、同じくフランス人のピエール・クール作詞の作品で、「悲しき天使」の曲でも有名な(これも大好き!)ギリシア人のヴィッキー・レアンドロスの持ち歌(1967年発表)だった。

 それを、ポール・モーリアがイージーリスニング調にアレンジしてシングルレコード化して翌年、大ヒットした。調べてみると、その年のビルボードで5週連続1位。年間でも、ビートルズの「Hey Jude」に次いで2位になっている。

 

 僕は、原曲も、ポール・モーリアバージョンも理屈抜きで大好きだ。これは、以前、紹介した「Greensleeves」とほぼ同じ感覚だ。

 

 ただ、ただ、曲を聴いて、

 ただ、ただ、うれしくなるし、

 ただ、ただ、悲しくなるし、

 ただ、ただ、幸せな気持ちになる。


 それが、このようなごく限られた期間と、時間と、シチュエーションの中で聴けるその言い得ないよろこびと感動を味わえて本当によかった。



♪「恋はみずいろ」/ Paul Mauriat

https://www.youtube.com/watch?v=qEUJBQ1uI4M


現在地:秋田県男鹿市脇本富永寒風山

https://www.google.co.jp/maps/place/%E5%AF%92%E9%A2%A8%E5%B1%B1/@39.9322507,139.8578321,13.5z/data=!4m5!3m4!1s0x5f9019c953e1df9b:0x53a64a7b839702f3!8m2!3d39.9337296!4d139.8753119?hl=ja&authuser=0



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 1か月にわたって「北へ」シリーズを読んでいただいてありがとうございました。

 なんとか、この最終話の4月の鏡のような水田に間に合うように完結することができました。

 

 今回の旅では、インストゥルメンタルも入れた洋楽を中心に紹介しましたが、いかがだったでしょうか。


 僕の一人旅は、もっぱら、「西へ」か「北へ」のどちらかでありまして、「東」と「南」は皆無なのであります。

 その理由は簡単で、「海沿いの旅」しか有り得ないのであります。

 前世のせいなのかどうなのかは分かりませんが、海が遠くなるような長距離の旅は苦手で、海から離れれば離れるほど、後ろ髪を引かれる思いと、なんともいえない心細さを感じずにはおれなくなります。


 ですから、これ以後、この街を出発する旅をするとしたら、やっぱり、「西へ」か「北へ」の旅で、曲のレビューをするなら、今度は、演歌か歌謡曲になってしまいます(笑)

 このシリーズをご覧になった方や、旅の途中で声を掛けてくださった方々に感謝します。



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北へ 橙 suzukake @daidai1112

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