vol.12 ~「Hello It’s Me」(1972) Todd Rundgren~
秋田県に入る。
秋田県に入って最初の街は、(おそらく平成の大合併でできた)にかほ市という。合併前は、
それほど大きくない海水浴場と温泉がある街で、北への旅の最初と2度目にこの地に宿泊した。朝10時頃に家を出発すると、大体、この辺りに着くのが18時頃で、グーグー鳴るお腹と、夕陽を見ながらつかる大浴場が頭にちらついて旅館の門をたたくことになる。
だけど、今日の出発時間は7時前。国道7号線沿いのお世話になった旅館を2秒ほど左目で確認しながら通り過ぎる
「Hello It’s Me」by Todd Rundgren
1972年のアルバム『Something/Anything』からのシングルカットで、ビルボード5位になっている。これに先立ってシングルカットされた「I Saw The Light」も、おそらく、みなさんも聴き覚えのある曲だと思う。
この曲を初めて聴いたのは、NHK-FMの『クロスオーバーイレブン』だった。確か、大伴良則さんか小倉エージさんの選曲だったと思う。
スタンバイ前のバンドのメンバーの話し声から始まって、トッドの「One Two Three…」のカウント。なかなか揃わず、3度目のカウントでようやく演奏がスタートするのがこの曲のオープニングになっている。
そもそもトッドは、歌うことはもちろん、様々な楽器を自分で演奏し、作詞・作曲を行い、プロデュースも自分で行うマルチプレイヤーだ。実際に、2枚組アルバムの『Something/Anything』の4分の3の楽曲を全て独りで演奏して多重録音している。
何年も『クロスオーバーイレブン』を聴いていればわかるけれど、「Hello It’s Me」は、何度もこの番組の1曲目か2曲目を飾った。
1978年にスタートした『クロスオーバーイレブン』は、先に記した著名な音楽評論家達によって選曲された洋楽と、番組途中に入る短い物語(スクリプト)から構成されていた。初代ナレーターは石橋蓮司氏。それ以後は、清水紘治氏、富山 敬氏、横内 正氏が務め、第5代の津嘉山正種氏が、ナレーター陣で最長の20年間ナレーションを行った。
街も深い眠りに入り 今日もまた 一日が終わろうとしています
昼の明かりも闇に消え 夜の息遣いだけが聞こえてくるようです
それぞれの想いをのせて過ぎていく このひととき
今日一日のエピローグ クロスオーバー・イレブン
(初期の『クロスオーバーイレブン』オープニングのナレーションより)
アジムスの曲が流れる中、このオープニングナレーションで始まって、どちらかといえば、キャッチーなその当時のヒット曲が番組の1曲目を飾る。
オープニングナレーション通り、10年以上、一日の終わりをこの番組と共に過ごしていた僕は、22、23歳の頃、 “自作クロスオーバーイレブン”をカセットテープで何本か作った。
使用機器は、当時のダブルカセットデッキ1つ、のみ。
真ん中に挟むスクリプトは、片岡義男氏の短編小説や雑誌に載っていたコラムを使った。
録音は、安アパートの一室で、車通りの少ない深夜から明け方にかけてやった。
最初の数本は、本番組と同じ、スクリプトを2回に分けて録音して、他は曲で埋めた。
しかし、いかに短編といえども、たった2回の録音では収まり切れないことから、それ以後は、曲間に4~5回に分けて録音した。
自分の大好きな洋楽や、ジャズ、フュージョンの選曲やダビングする順番を考えるのはとても楽しかった。
が、しかし、問題は、スクリプトの朗読だった。
第一に、読み間違い。第二に、滑舌の悪さ。そして、もっともショック度の大きい第三の問題点が、車やバイクによる騒音ノイズである。
田舎の街通りなものの、道路沿いの1Fの安アパートに住んでいたため、夜や明け方に暴走する車やバイク、明け方には、新聞配達や牛乳配達のバイク、果ては、油を刺していないキーキー鳴る自転車のブレーキ音まで、敵は多かった(笑)
口を「い」の字の形でキープしながら、一生懸命に津嘉山正種の声を真似て、あとわずかのしゃべりで完璧で終わる!と思っている矢先に、「ブロロロロロオオ~」とバイクの排気音。
「おおおおおおおおおおおお~い!!!!! なんな~ん!!!!!!!」
こんな馬鹿げた所業を何ヶ月か行っていた。
もちろん、「Hello It’s Me」は、“自作クロスオーバーイレブン”でも栄えある1曲目として選曲している。
♪「Hello It’s Me」/ Todd Rundgren
https://www.youtube.com/watch?v=xwx849ymo1c
現在地:秋田県にかほ市象潟町付近を走行中
https://www.google.co.jp/maps/@39.2202231,139.8919308,14.25z?hl=ja&authuser=0
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