たのしいうつ病

うつ病患者はぐるぐる回る？

　一周まわって。

　という言葉がある。

　高校時代、「一周まわってイケメンだよね。」といわれたことがあるのだが、それが〝ほめ〟だったのかいまだに判断がつきかねる円（まる）山（やま）だ。

　かと思えば「一周まわって、ない。」と振られたこともある。人を振る時に一周まわるな！　あと、人を振る時に「ない。」っていうな！　ファック！

　一周まわって、という言葉には通常は冒頭のような用途は推奨されない。日々の会話に注目すれば

「一周まわってウンナン再評価してんだよね。」とか

「一周まわって町田家アリだよね。」とか

「一周まわってセカオワありだよね。」といった用例に出会うことが出来、まあおおむね〝うぜえ〟というか、そういえば前の本をだした時、編集者に

「一周まわって青春小説ですよね。」といわれたことがある。あれはほめられていたのか？

　ともかくそんな円山であるが、うつが悪化してからというもの一周まわってよく一周まわる。

　会社を辞める、いや金はどうする、辞めない、病気、会社、睡眠、食事、素人ものＡＶ、辞める、辞めない、書いていて暗（あん）澹（たん）としてきたが、うつ病の思考は同じところをぐるぐるまわるものなのだ。

　最近はこうも思う。

　一周まわって食事ってありなのではないか。

　いいたいことはわかるのでまずは待ってほしい。

　力なく落ち込むばかりがうつではない。不安でそわそわして横になっていられない時もあれば、意味もなくはしゃいだり、苛々して暴（©噓喰い）に訴えたりすることもある。人とたのしく飲んでいる時に、いきなり鬱（ふさ）ぎこんで顔を手で覆ったり。うつ病の一日はジェットコースターだ。おかげであまり退屈しない。

　ひと口にいえば情緒不安定ということにもなるが、数分単位で気分が一周まわり続けているのだ。以前食欲がないということを書いたが、

「栄養は摂（と）ったほうがいいよな。」一周まわって

「食欲ないなら食わなくてもよくね？」一周まわって

「家系のトッピングはほうれん草がマストだな。」一周まわって

「食事って邪悪だよね。」一周まわって

「もう酒だけで生きる。」

　円山は何も行数稼ぎをしているわけではない。

　もはや何周まわったかわからない。さっきジェットコースターと書いたが、どちらかといえばサーキットに近い。もう、サーキットの狼。（意味不明）で、最近は

「一周まわって食事ってありだと思う。」ってな心境、ということだ。

　もちろん食事ときたら無限に選択肢があるわけで、「食事、あり。」の心境にいたってからも何周としたかわからない円山だ。

　一周まわって肉、一周まわって豆腐、一周まわってカニカマ、一周まわってケバブ、一周まわって納豆、もういいか、最近は一周まわってグリーンスムージーを毎日飲んでいる。

　ＯＬか。

　日々摂取するカロリーの大半が〝薬〟と〝酒〟である不健康の化身のような自分が、まさかグリーンスムージーにたどり着くとは思わなかった。

　一周まわりすぎ。

　一周まわってコースアウトした感もある。

　言葉の使いかたもいい加減迷子だが、いちばん迷子なのはもちろん円山だ。今日もローソンでスムージーといいちこを買いつつ、まわりめぐってどこへたどり着くのか次の周回をひそかに待っているのである。