うつは性欲がなくなる?
ひたすら横になっている。また風邪をひいたわけではない。だいたい常にそんな感じだ。以前「食欲がなくてめんつゆのお湯割りで済ませている」と書いたが、食事をする気力もなくてなんの気力があるものかと。しかし立ち上がらないのは円山ばかりではない。
いわゆる〝息子〟の元気がないのだ。
うつには性欲の減退がつきものだ。そりゃそうである。やる気もないのにヤる気がでるかという話だ。
暗い目で相談を持ちかけてきた同僚の股間がふくらんでいたら心配する前に身構えるし、「ありがとう、ちょっと楽になってきたよ。」と涙ぐむ同僚の股間がやっぱりふくらんでいたら、怖い。部屋の隅で膝を抱えながら、股間をぎんぎんにさせていたらもっと怖い。
二十当然。
とかいう言葉があるそうだ。二十代の股間は大上段に構えていて当然、くらいの意味らしい。
ところが
わかっている。
わかっているのである。うつのせいだということは。食欲だとか性欲だとか、ようするにそういう、人間の前に〝生きもの〟みたいな欲が減退するのは、そりゃ病だ。かといってうつは
「うつ病ですね。バイアグラを処方しましょう。」
なんていう精神科医はいない。しかし、しかしだ、早生まれであるが故にぎりっぎりで二十代の円山、のんびりと回復を待っていたら寛解するころには勃たなくて当然の
これでも真剣なのだ。小刀だけど。
恐怖といえば、もうだいぶ前の話になるが円山より六つか八つも上のあるホラー作家と飲んでいる時に、
「俺はまだ一日に三回はオナニーするよ。」といわれてその人のどの本よりも恐怖した(←超失礼)円山だ。無意識に「いっても三十路だしな。」と自分を誤魔化していたが、以来いいわけが通用しなくなってしまった。だからといって何がどうなるものでもないので歯がゆい。
恐怖、というのはなにもおおげさではない。男性の人生は常に〝ハゲる恐怖〟〝勃たなくなる恐怖〟とセットである。
女性にはピンとこないかもしれないが、〝勃つ〟と〝勃たない〟の間には駄菓子と宮廷晩餐会ほども差がある。息子の勢いがよいというだけで、男性の顔には鳥山明が描くドヤ顔みたいな自信がみなぎるものなのだ。ミスター・サタンとかちんこでかそうでしょ?
俗に、手のひらをひらいて親指から順番に十代、二十代、……五十代のいきおいだといわれるが、ある朝気がかりな夢から目を覚ましたら何十歳ぶんも老けていた、と想像していただきたい。それが恐怖でなくしてなんであろう。
まあ、元気ないおかげで朝は楽ですけどね。
性欲が強いとハゲるというので、もうひとつの恐怖〝ハゲる恐怖〟のほうは回避できる……かもしれない。上段だの下段だの、刀に例えるのもおこがましい。人という字の人←このへんからはみでた書き損じみたいなものをつまみながら、あまりの元気のなさにそんなどうでもいいことを考えて自分を慰める円山なのである。
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