うつははかない?

 前回の反響がまるやまの周囲でいやに大きかった。

「いやに」っていいかたもないが、たった数文字、ほんのちょろっと書いただけなのに、

「読んだよ。パンツはかないの?」

「今もはいてないの?」と友人知人に肩をたたかれ、生きるのがつらいと愚痴れば

「儚いね。」とからかわれ、飲み会で酔えば

「吐きなよ。」といわれ、職場の後輩には

「……パンツははいたほうがいいですよ。」と例によって正論を投げられ、おまえらそんなに円山のパンツが気になるのかと。変態はおまえらのほうだと。『嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい』とかいうアニメが流行るクールジャパンなこの国で、パンツの食い込みが苦手なだけでなぜ変態あつかいされなければならないのか。あのアニメ観てるやつみんなおパンツぬいでるだろうが。

 七文字だぞ、自由律俳句以下の文字数で(←知的な笑い)結構可愛がった後輩にまで変態あつかいされるにあたって、普通こういう場で〝反響〟といったら〝共感〟とか〝好評〟とかと違うんかい、と逆上しかけたが、「ノーパン」と「逆上」の組み合わせはなんだかやばそうなので踏みとどまった。

 まあ実際、

「サークル〝ノーパニスト〟ですが同人になってください。」とか反響があっても困るは困る。円山には主義も主張もなければ、性癖もないし女王様もいない。ただ、パンツが股に食い込むのがどうしても気になってしまうのである。

 期待を裏切って悪いのだが、円山だってはくときははく。人と会うときとか、デートのときとか、前回の理屈でいえばノーパンで社会的に困ったことはないわけだから、これは病気ではない。「じゃあ性癖か。」というとそういうわけではなく、なんというか、あれだ。そういう人だ。

 いや、そういえばデートのとき渋谷の居酒屋で急に立ちあがってパンツを直して嫌われたことがあった。その失敗を活かし、以降円山のはくものはいわゆるタイツである。他に思いつかないので人選が悪いが、がしら 2:50 がはいているあれだ。

「そのほうがタイトで食いこまないか?」といわれたが、着用方法にコツがある。きつめの靴下でタイツを下のほうへひっぱることによって、股に適度な空間を確保するのだ。女性にはわからないかもしれないが、男性の場合股下にこぶし大の空間を確保する必要があるのである。

 これはうつをめぐるエッセィであって、調べてみるとたしかに、うつ病患者には皮膚感覚が敏感な人間が一定数いるようである。同時に〝四月はノーパンをはじめるのに最適〟とかいう記事も見つけて気にはなかったが(誰が誰に向けて書いたんだ)どんどん話がずれてゆくのでさておいて、そもそも前回も書いたが、鈍感であればうつにはならない。敏感だからうつになるのだ。

 これを逆に考えれば、「バンツが気にならない」→「鈍感」ということになる。乱暴にいえば、「パンツはいてるおまえらこそのろまだ。」ということだ。うつ病患者というのは変に期待しないだけに冷静だ、というデータがある。ということは、うつ病患者が「ノーパンは理にかなっている」ということは、ノーパンは理にかなっているということなのではないか。

 僭越ながら円山はうつ病患者の代表として、ここに「はかないうつ病の会」を発足したい。入会資格は儚いこと、うつ病であること、パンツに疑問を抱いていることだ。誰も見ていないようなこんなエッセィで苦情がくるような世界を、ともに変えようではないか。

 しかし最近は寒いのでちゃんと厚手のヒートテックをはいている円山としては、提案だけして金だけはいってこないかなあと思わないでもないのであった。

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