第4話 続・リサ先生の簡易チュートリアル
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“すべての子どもたちが、自分らしく成長出来る場所を目指します――
開発・運営責任者 ゲームクリエイター
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ゲーム業界では超がつくほどの有名人――若くして天才と評されているクリエイター、紫鳳院さんによる教育理念らしい。
でも正直、僕がこのLROの学園に進学しようと思った理由は、単純にMMORPGが大好きだったからだ。
だから、ゲームの中で学園生活が送れるなんて、そんな夢みたいなことが体験出来るならと、ただそれだけの理由で僕はLROの学園プロジェクトに応募した。創った人の気持ちなんてどうでもよかった。
でも、ログインした今は少しわかる気がする。
すべての子どもたちが自分らしく成長出来る場所……紫鳳院さんは、きっと優しい人なんだろう。
だって、その想いだけで完全国産となる初のVRMMORPGを創ってしまったのだから。
そんなの、僕にも想像も出来ないくらいに大変なことなんだろう。
まぁ、その肝心の紫鳳院さんは、入学式で突然体調不良で挨拶出来なくなってしまったんだけど。どんな人なのか一目見てみたかったんだけどなぁ。
「さて、説明はこれで以上かな。細かいところはパンフレットと、先ほど配布した学生手手帳に目を通してくださいね。授業は翌日から始まりますが、本日はこれでおしまい。放課後はみんな、好きにLROで活動してくださいね! それではまた明日、元気に登校してきてね!」
リサ先生の言葉に僕たちはそれぞれ大きな返事をして、ついに放課後!
当然、ほとんどの生徒たちは我先にと学内掲示版へ向かって駆けだしていた。もちろん僕もその中の一人だ。
そうしてたどり着いたのは、何百人もの生徒が押し寄せる掲示版前。遠くから指型のタッチアイコンを使って掲示版にタッチすると、眼前に学園クエストのウィンドウが表れ、そこにはいくつかの依頼が並んでいた。
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■学園クエスト一覧
▼勉強クエスト
『簡単な予習をしよう!①』
▼討伐クエスト
『はじめてのモンスター討伐①』
▼納品クエスト
『ミルクを一本買ってきてほしいです』
▼護衛クエスト
『隣町まで俺の護衛をしてくれ!』
▼ミステリークエスト
『学園に潜む謎を解け!①』
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おそらくまだ初日だからだろうけど、今のところ存在する学園クエストは以上だった。
今までに他のMMOをプレイしてきた経験からすると、たぶんこれらの初心者向けクエストをクリアしていくうちに、どんどん新しいものが追加されていくんだろう。
パンフレットの説明には、『※クエスト内容は個々人によって異なります』と注意書きがされているから、職業やステータス、性別などによっても内容が違うのかもしれない。
僕はとりあえず五つのクエストをすべて受注して、一番簡単そうな納品クエストをこなしてみることにした。
「えーっと、アイテムを売ってるところは……」
マルを描いて『リンク・メニュー』を呼び出し、受注クエスト一覧から詳細を確認。ミルクは道具屋に売っているごく一般的な回復アイテムの一つのようだ。
そのまま続けて王都のマップを表示し、道具屋を見つけてタップすると、足元に矢印の指示マークが表れた。なるほど。これに従えば迷わず道具屋に行けそうだ。
それから僕は、学園から支給された《ラピス》と呼ばれるLROの通貨で3ラピスのミルクを一本買い、指定された街人のノンプレイヤーキャラクター――NPCのところへ運んだ。
「ありがとう、助かったよ! 毎日一本は飲むことにしてるんだけど、ちょっと足を痛めちゃって……はい、これはお礼よ。またお願いね」
「あ、は、はい」
NPCは僕たちプレイヤーが操作しているキャラではなく、ゲーム側が用意したプログラムで動く存在で、要はAIだ。けど、NPCとは思えないあまりにもリアルな人の存在感に、思わず返事をしてしまった僕。
その若い女性NPCは笑顔のままで言った。
「あなた、最近出来たあっちの学校の生徒さんよね? 若者は学問に励み、肉体労働にも励み、健やかにね!」
「は、はい」
手を握られると、その手にはちゃんとした質量を感じる。本当にリアルで普通に人と接しているのと変わらない感覚だ。
こ、これがVRMMO……すごい! しかも《町娘》とかいう名前もないNPCなのにやたら可愛い!
そんなわけで初めての学園クエストをクリアした僕。
その時点でクエストをクリアした報酬――『100ラピス』が自動的に手に入ったログが流れる。わざわざ報告に戻る必要はないらしい親切設計でありがたい。
しかし、やはりLPがどれだけ手に入ったのか、そもそも手に入っていないのかはわからない。まぁわからないものを気にしても仕方ないし、ひとまずは無視だ。
それからとりあえず掲示版のところへ戻ってみると、思ったとおり、新しいクエストがいくつか追加されている。こうやってアイテムやお金を集めたり、ポイントを稼ぐのが序盤の基本スタイルになりそうだ。
「よし……次は討伐クエ、やってみるか!」
僕は意気揚々と学園を出ると、石畳の大通りを他のプレイヤーたちと一緒に走り抜け、南の正門から初めてのフィールドへと飛び出した。
よっし! いよいよ戦闘だっ!
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