第40話 死よりも重い罰 下
「この人は?」
アサトが、アルベルトとクラウトを見て言葉にすると、両者はアサトを見てから『アバァ』を見る。
「…そうだな…こいつにうってつけの場所がある…ちょうど湖だし…それに、奇妙な奴も、こいつには興味を持つかもしれないな…」
アルベルトはポドリアンを見ると、大きくため息をついてからゆっくり体を動かすポドリアン。
「あぁ…そうだな…なら、わしがちょっくら連れて行って放してくる」
余分に余ったロープを拾い上げた。
「あぁ…あとは」とロマジニアを見て、「ネコ娘とそこのネコ親父の血液鑑定の結果を聞いて来てくれ」
その言葉にポドリアンもロマジニアを見ると、ロマジニアは二人に向かって小さく頭を下げて見せた。
「じゃ…、今からかっ飛ばせば…3日後には戻ってくれるだろう…討伐戦には間に合うように行ってくる…あいつも連れて行くか…」
『アバァ』の背中を小さく蹴って立ち上がらせ、その行動を見てアルベルトは頷き、「あぁ…そうしてもらわなきゃ、こちらも困る」とポドリアンへと視線を向けた。
その視線に作り笑いを浮べながら部屋を後にし始める。
「おれが…こいつを山越えのルートまで連れて行く…」
ロマジニアが歩み寄り、アサトが持っているロープに手をかけた。
「ダメだ…、そいつは別のヤツにやらせる…お前は、俺が話がある」
冷ややかな視線をおくる。
「あぁ…おまえの話しはわかっている…、お前の申し出は受ける」
アサトからロープをとり、イィ・ドゥを立たせた。
「そうか…なら、早めに帰ってこい…、これから大一番がある、お前も参加するんだ…」
その言葉に小さく頷くと、「馬を借りて行く…」と言葉にした。
「あぁ…好きなのを使え」
アルベルトの言葉に小さく頷くと、部屋を後にし、アルベルトは小さく深呼吸をして、残ったクラウトとインシュア、そして、アサトを見た。
「…合格でいいよな…」
アルベルトの言葉にクラウトはメガネのブリッジを上げ、インシュアは大きく背伸びをして見せ、アサトは…小さくうつむいて、小さく、そして…本当に小さく頷いて見せた。
家の周りでは、『アバァ』の一団の遺体を一か所に集めているチャ子らの姿があり、その他にもスカンやディレクのパーティーの姿、応援に来てくれていた、ギルド・エンパイアの者らの姿や、荷馬車に乗っている拉致者の姿もあった。
タイロンらが、村の中にある木材を集めて火葬の準備に入っている。
家のドアが開くと一斉にドアを見る一同。
そこには、後ろ手にロープで拘束されている『アバァ』の姿があった。
そばにいる者に、『アバァ』らが使っていた馬車を持ってこらせると、その檻に荒々しく『アバァ』を乗せたポドリアン。
ポドリアンが馬車を用意している内に、ロマジニアが犬のイィ・ドゥと共に出てきて、村にある馬を使用する為に裏へと向かうと、インシュア…そして、クラウトにアサト、最後にアルベルトが出てきて、冷ややかな視線で村を見渡していた。
ポドリアンとグリフが『ファンタスティックシティ』へと向かう頃には、ロマジニアとディレクが馬に乗り、犬のイィ・ドゥを歩かせて、
その姿を目を細めてチャ子が見ていた。
その傍にアサトが来て小さく笑みを見せる。
「…あの人…どこに行くの?」
「あの人って…どっち?」と訊くアサト。
その言葉に小さくうつむいた。
「…そうだね、イィ・ドゥは、
「…命令?」
「うん、それに…」とチャ子を見る。
「チャ子のおかあさんの仇は…ちゃんと、アルさんが取ってくれた、内容は教えられないけど安心して…、あの人は、もう…人…では無いけど、今までみたいに有意義には生きられない…、…ほんと地獄だよ……、そして、その罰にお父さんも納得していた……。」
村から出て行こうとしている馬車に視線を向け、その視線にチャ子も同調してみる。
その先…、馬車に積まれている檻の中には、柵を掴んでこちらを見ているカエル顔のイィ・ドゥ…、『アバァ』の姿がそこにあった。
家らの裏手には、醸造所がある場所があり、その建物の裏手には、うっそうと生い茂る高い木…ポップの木が生育されている畑があった。
その畑から少し横に外れた、小さく拓けたところには、村人であろうか…、獣人のイィ・ドゥらしき者らの首が樽の上に一つずつ置かれており、その手前では、焼かれて炭になっている頭部のない胴体が山済みになっていて、『アバァ』らの手口…とわかる証拠がそこに、無造作に存在してあった。
その場所を見て、アルベルトは小さく舌打ちをしていた。
炭になった胴体と共に、『アバァ』の配下の者の遺体を置き、住民の頭部を置くと、薪をくべて火を付け、火葬を始めた。
一同は煌々と燃える遺体らを見ている。
そこにアルベルトが腕組みをして、燃え盛る炎の前に立った。
「さて…。」
その言葉に一同がアルベルトへと視線を向け、一同を見渡し、「『アバァ』の処遇についてだが、これは、おれがアイゼンから許可をもらい、あいつは生かすことにした」
「…生かすって…」とタイロンがつぶやく。
「あぁ…、お前らの中にも、この処遇には不満を持つ者がいるのは確かだ…、だが、あいつは、死よりも重い罰を与えなければ、今まで失った命がうかばれない…だから…。あいつには、呪いをかける事にした…あるいみ死の呪いだ…」とチャ子を見る。
その視線に小さく顎を引いたチャ子。
「その内容は…まぁ…とりあえず、時間はかかるかも知れないが、あいつは、呪われて死ぬ…この事だけは覚えておけ!…そして、犬野郎は…俺達への抑止力の為に生かした…。これも覚えておくんだ、この先、俺たちに、色々な非の粉が降り注ぐであろう、その時は、お前らの心の中にある正義を貫け…そして…」
空を仰ぐと、夕暮れが近付いている空が見えた…。
「…その正義に、責任を持つんだ…。…暗くなる前に『デルヘルム』へ帰る。」
視線を戻してアルベルトが言葉にし、その言葉に頷く一同。
そして…。
「…今日はよくやった…」
レニィを見ると、ケビン、トルースにベンネル、オースティ…そして、ジェンスにセラを見て、最後にチャ子を見る…。
「…合格だ!」と重く言葉にした。
その言葉に小さく笑みを見せるチャ子は、目頭を再び緩まし、大きな涙を流し始め、そのチャ子にセラが近付き、レニィとオースティ、そして、ベンネルが手を差し伸べた。
トルースも嗚咽を始めてから、腕で目元を覆い、ケビンとジェンスは、手を高々に上げて、その手を握った…。
レニィらの行動を見ていたアサトらは、互いに顔を見合いながら大きな笑みで、卒業を祝福していた……。
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