第29話 課題は3つ…と、採用試験…。 上
1時間30分かけて、目的地の『カンナ』の村付近に到着した。
ギルド・エンパイアの狩猟者が先行していて、一団の情報が洩れない配慮をしておいてくれたようである。
今回の討伐戦と言うか、卒業試験には、アサトのチームの他に、ディレクのチーム、そして、スカンのチーム、その他に、テレニアとグリフ、ポドリアン、インシュアにアルベルトが同行し、また、エンパイアより狩猟パーティーが2チーム、計22名が補佐に入ってくれた。
話によると、フランシスも、最近のルヘルム地方での奴隷狩りには、懸念を持っていたようであり、その中でも大将クラスの『アバァ』を狩る事が出来るのなら、尽力は惜しみなく使うと言う事である、また、パイオニア独自の育成教育の実態を見ておきたかったようでもあった。
参加したエンパイアのチームは、かなり上級クラスのようであり、そのリーダーがクラウトと共に馬車に乗り、色々話を聞いているようでもあった。
アルベルトを先頭に、その後ろにインシュアとグリフが付き、アサトは馬に乗り、馬車列の後方をアリッサと、チャ子の父と言っているロマジニアと進んだ。
馬車6台には、先頭の馬車をポドリアンが手綱をとり、後方の荷台には、チャ子とケイティ、セラにレニィ、システィナが乗っていて、次の馬車には、タイロンが手綱を取り、荷台にはジェンスとケビン、トルースとベンネルとオースティ、そして、テレニアが乗っている。
残りの4台には、3台目にエンパイアの狩猟者の者が手綱を持ち、クラウトが乗り、エンパイアの狩猟者の者らが6名が乗っていて、次の馬車は、ディレクが手綱を持ち、ディレクのチームの者らとエンパイアの者が数名乗り、次の馬車は、スカンが手綱を持ち、スカンのチームの者らとエンパイアの者が乗っていた。
残りの一台は、食料や飲料水などを積んでいる。
目的地付近に着くと戦闘の準備を始める。
装備を確認しているチャ子らは、何処か言葉少なげで、チーム・レニィと言う名前を掲げて居るが、リーダー的な者もいない、話によると、この卒業試験をした後、ポドリアンらが行っているスイカ村…と言うか、村の名前がよくわからないが、クラウトと出会った村への物資輸送の護衛を行うようである。
ま…卒業出来たらなんだが…。
「それでは、まずは、同行してもらっている人達への感謝を」
クラウトが言葉にすると、レニィがアサトらを見た。
「…今日は、ありがとうございます。皆様の手を煩わせないように頑張りますので、あたたかい目で見守って下さい!」と頭を大きく下げた。
その行動に、ベンネルとオースティも頭を下げ、ケビンとトルースが立ち上がり、その動きにチャ子も立ち上がって頭を下げた。
セラとジェンスは顔を見合わせていると、システィナが小さく言葉をかけ、その言葉を聞いた両者も立ち上がり大きく頭を下げた。
「じゃ…、この者以外は、林の周囲へと散開して、逃げだしたモノを、村へと戻すように、言う事を聞かない場合は…、止もう得ない。狩っていいと言う事で…、2人1組で行動をお願いします…。そして、今回の狩りは、他言無用でお願いします。この狩りは、我々ではない他の者らが狩った…と言う事で…」
レニィらの前に立ったクラウトは、同行してくれている者らへ向かって、大きく頭を下げた。
そのクラウトを、冷ややかな視線で見ていたアルベルトが、レニィら一同の前に立った。
「あぁ。クソ眼鏡の言う通りだ。この狩りを俺たちがしたことになれば…、大ごとになる、だから、自慢はするな…いいな」とレニィを見る。
レニィは生唾を飲むと小さく頷き、チーム一同を見ると、レニィの視線に一同も小さく頷く。
「…今回の課題だ…」とレニィと一同を見て、「…今回の課題は3つ」と人差し指をあげるアルベルト。
「まずは、拉致者全員の奪還だ。この作業は、デカ髭とデブ髭に補佐をしてもらう。作戦は、あとからクソ眼鏡が説明する。とにかく…全員の無事が条件」と中指を上げる。
「次に村人の救出だ。この場合、偵察の者から聞いたが、どうやら被害が出る可能性がある…だから、とにかく、一人でも多く救出するんだ」と親指を上げ。
「これは絶対条件…」と一同を冷ややかな視線で見る。
そして……。
「誰も死ぬな!」とチャ子を見た。
チャ子は、目を鋭くすると大きく頷いて見せた。
「それでは…作戦だ。」とクラウト。
「まずは、拉致者の救出である。この作業は、セラとジェンス。そしてオースティで行う。」
クラウトの言葉にセラがロッドに力を込めた、その行動にシスティナが肩に手を置く、その隣でジェンスが生唾を飲み、オースティは、隣のベンネルと視線を合わせた。
「この3名にポドリアンさんとグリフさんが追随してください。檻のカギの解放などの作業、そして、救出作業をお願いします。ジェンスがメインアタッカーで、タンクは…」とセラを見る。
「出そう…『オークプリンス』」と重く言葉にする。
その言葉に小さく頷き、再びロッドを持つ手に力を込めた。
「檻に接近して、近くまで行ったら…『オークプリンス』の召喚を、そして、オースティは、タイミングを見計らって、防御の魔法を…」とオースティを見る。
オースティは小さく頷き、セラとジェンスに笑みを見せた。
「それじゃ…本動隊は…」とレニィを見る。
「拉致者の解放を確認したのち、または、戦闘になった場合…。村の裏側でエールの製造をしている住人の解放をする。タンクはトルース、メインアタッカーは、ケビン、サブはチャ子…。そして…、遊撃手として、ロマジニアさん…」
ロマジニアを見ると、ロマジニアは目を細めて小さく頷いた。
「遊撃手って…」
ケビンが不思議そうな顔でクラウトを見る。
「その役目は、アタッカーでもサブアタッカーでも…また、タンクでも、時と場合を見越して、その時に適切な役割をしてもらうと言う事だ」
クラウトはケビンに説明をした。
「そんな事もあるのか…」
クラウトの説明に、感心しているケビン。
「ベンネルとレニィは、本動隊に追尾するようにして、逃げて来た住人への対応をする…、林付近にいる者らを確認して、そちらに逃がすように…」とセラを見る。
「セラのオークプリンス召喚が作戦開始の合図だ…、それをすべての者が確認したら、動けるように準備を始めるんだ…」とアルベルトを見た。
アルベルトは、小さく頷き、「そして…これが最も重要な事だ」とアルベルト。
「『アバァ』以外は、好きに狩れ!だが…『アバァ』だけは生きて俺の前に連れてこい…、または、その場で拘束しろ…」と強く言葉にする。
「え?…狩らないんですか?」
アサトが驚いた表情を見せて言葉にすると、そのアサトを冷ややかな視線でみるアルベルト。
「あぁ…あいつは、死よりももっと重い罰を与えてやる…このおれが…」とチャ子を見た。
「…とにかく…『アバァ』だけは、生きて捕獲だ!いいか」
アルベルトが喝を入れる。
「はい!」
一同は大きな声を上げて、アルベルトの喝に応えた。
「敵は34名と『アバァ』の35名だったが、現在確認されている数は…拉致者の所にいるゴブリンが4体、村には、犬のイィ・ドゥと思われる者が6体、オークが5体、そして、『アバァ』の傍にいる猪のイィ・ドゥが2体の…18体だ!。住民は8名、醸造所と思わしき場所とポップ畑にいると思われる、そして、拉致者の人数は、26名…。」
クラウトは、一同を見ながらメガネのブリッジを上げた。
「数…減ってない?」
不思議な表情を見せながらレニィが訊く。
「あぁ…、みんなが君らへの応援を兼ねて、奴隷狩りに言っていた一団を狩って、数を減らしておいてくれたようだ」
クラウトの言葉に、アルベルトは目を細めて一同を見ていた……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます