第26話 先輩狩猟者の援護 下
アルベルトが見ていた方向の同じ時間。
アサトは、ゆっくりと静まり返っているテントへと向かう。
その場には、テントが4棟。
そして、そばには馬車があり、その馬車には、獣人の亜人やイィ・ドゥなどが8人、雑魚寝をしているようであった。
アサトとインシュアがテントが見える場所までくると、馬車を覗いているケイティとクラウトが見えた。
2人は、中を覗くとアサトへとサインを送る。
そのサインを受け取ったアサトは、アサトらより少し離れた場所で状況を見ている、エンパイアの者2人へと頷いて見せた。
そして、振り返り、ちかくにある繁みに身を潜めているアリッサとシスティナを見て合図を送ると、ゆっくりとテントへと向かって進んだ。
馬車近くにあるテントには、グリフとエンパイアの狩猟人が組んで向かっている。
アサトはゆっくりテントの入り口に立つと、テントの脇にインシュアが立ち、小さく頷く…そして……。
「おりぁぁぁぁ…出て来いヤァ~~~」
大声を出しながらテントの天井を叩き、テントを潰すと、同じような光景が2か所で見え、壊れたテントから続々と亜人や、ゴブリン…そして、オークが飛び出してきていた。
アサトは、入り口から這い出て来るもの…オークに向けて太刀の剣先を鼻先に突き付けて、そのモノを見下ろした。
オークは、アサトを足元からゆっくり見上げてアサトと視線を合わせる。
「おはようございます…、すみませんが…、あなた達を拘束します!」
アルベルトでは無いが、冷ややかな視線を向けて言葉にした。
オークが言葉を理解したかしないかはわからないが、そのオークは、観念したようにその場に膝間ついた。
同じ光景が3か所のテントで見え、残った1つからイィ・ドゥが出てくると、周りを一度見てから…、アサトの方向を向き、手にしている武器をゆっくりと降ろした。
アサトは、背後からゆっくり進んでくる、影と雰囲気を背中に感じている。
アサトの背後から、細く短いロッドを真っすぐに水平に突き出し、その先には黒く小さな球を発したままでシスティナが現れ、その後ろには、護衛をする形でアリッサが就いている。
クラウトとケイティが、檻の中のモノを開放すると、テントから出て来た者らを拘束し始めた。
1つのテントの者らを拘束すると、そのテントを制圧した者も他のテントの者を拘束し始めたので、全員を拘束するのには、時間はかからなかった。
「でぇ?」
インシュアが大剣を肩に乗せて、拘束した者らを見下ろした。
「…とりあえず…聞きましょう」とアサト。
「聞くって?」
少し不思議そうな表情でインシュアが訊いた。
その問いに笑みを見せるとクラウトへと視線を送り、その視線にクラウトは小さく頷くと…。
「君たちは、彼女らをどこに連れて行くつもりだったんだ?」
拘束されている、犬系と思われる獣人と人間の合いの子、イィ・ドゥに問う。
テントを張っている場所の中央に集められ、拘束をされている者が、犬の獣人の亜人が3体に犬系の獣人のイィ・ドゥが2体、ゴブリンが2体にオークが1体の8体であった。
その向こうにある馬車から、グリフとエンパイアの狩猟人が檻を外しているのが見える。
「…どこに…ってウリにだよ!」とイィ・ドゥ。
「だれにだ?」とインシュアが怪訝そうな視線で見る。
「…誰にだ…と言われても…」
「…なら…『アバァ』は知っているよな」
クラウトはメガネのブリッジを上げた。
「『あ…アバァ…』って…知らない!」
「あぁ、そうか、なら残念だ。僕らは、その『アバァ』から頼まれた者らだ、最近この辺を荒らしている者がいたり、また、横流しをしている者がいるから、もし見つけたら…“消せ”とな…。」
冷ややかな視線で見下ろすクラウト。
「…な…なんだ、そうだったのか…、なら俺達ではない。たぶん『フィガロ』だ!俺達の他に村を出たのは、フィガロだけだから…」
「その者らだけなんだな…」
クラウトは確認をとる。
「…あぁ、そうだ、お前も知っているだろう、夕方までに戻ってこいって言われた。明日の朝には村を出て、『ゲルヘルム』まで行って、セーフ区画で狩りをするって…」とイィ・ドゥ。
「…そうか…妖精…ねらいのフィガロか…」とクラウト。
「あぁ…確か、南の方へ行ったはずだ、そろそろ近くまで来ているんじゃないのか?あいつは、目的以外にも狩りをして、ガキとやっている…」
「ガキって…子供?」
目を見開いたアサト。
「あぁ…なにがいいのかわからないがな…あいつは変態だよ…はははは…な、分かったらほどいてくれ」
壊れた笑みを見せながら、結ばれている手を差し出してきた。
「…どうする?」
クラウトはアサトを見る。
アサトは、イィ・ドゥを見下ろしながら小さく息を吐き…。
「僕は…、この狩りの責任を取ります…。システィナさんの力…見させてもらっていいですか?…アルさんが言っていた事…確認がしたい」とシスティナを見る。
システィナは目を鋭くしてイィ・ドゥを見ている。
「…システィナさん?」
アサトの言葉に我に返ったシスティナが、目を大きくしてアサトを見て…。
「…わたしも…この人達…フィガロって言う人は許せない…でも…、この人達は…」と大きく息を吸い込み…、「チャ子ちゃんらを楽にさせる為に…命を奪います!」と強く言葉にした。
その言葉に頷き、イィ・ドゥを見下ろして、「…すみません。僕のチームの魔法使いの
「たぶん…フィガロは、もうこの世には存在していない…、私が知りえる中で、最も危険な人間の1人がそいつを狩りに行っている…。ざんねんだ…」
クラウトがそのイィ・ドゥの肩を数回叩くと、その場を後にした。
その後にインシュアが来て、少しだけ見下ろすと…。
「あの子らは…家に帰す…さいなら…」と言葉を残した。
イィ・ドゥらは、なにが起きているのかわからない表情で、去ってゆくアサトらを見ていた。
そして…。
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