大丈夫 ?


ホワイトパールのサマードレス。

シルクか。

ところどころに、青い花がプリントされている。


見上げると祥華がモニターを見て微笑んでいた。

完璧メイク。


・・・


とんでもなく美形だ。


ノースリーブのか細い肩が透き通っていた。


・・・眩しいな


俺はウィンドウを下ろした。



「来て」


形のいい唇がそう言った。


「どこに ?」


「おうちに」


「えっ、ドライブは ?」


「危ないわ。貴さん野球見ながら運転する気でしょ ?」


「いや、そんなことは…」


「来て… ドライブはゲームセットしてからにしましょう」


祥華はそう言うと、バスケットを抱えて背を向けてしまった。


 

 ・・・おおっ



……………………………………………………


「やっぱり…羨ましい ?」


祥華が大画面を見ながら言った。


割烹着がクリーム色のカーディガンに替わっていた。


画面に目を戻すと、ダグアウトに戻る西崎と水野がグータッチを交わしていた。

そこに大沢が合流して、3人並んで何やら言葉を交わしている。


「うーん…… 誇らしい…かな」


そう言って、祥華を見上げるとそっと唇が重なってきた。

 

…………………………………………………… 



唇の感触は続いていた。



・・・夢か



祥華の鼻息が頬をくすぐった。



・・・現実 ?



ん ?



柚子の香り ?



・・・ホワイトチョコ



俺は祥華を引き寄せようとして、腰に手をまわした。


その瞬間、唇が離れた。



・・・



なぜびっくり顔 ?



「・・・う、うんと」



・・・うんと ?



そこで困られても……困る。



「放っておけない顔してたから…」



「放っておけない顔 」


 ……って ?



「サンドイッチ」




「えっ ?」



「いろいろ作ったの」



「サンドイッチ ?」



「前にパン好きって言ってたから」



・・・



「・・・ああ、言った」


「でも、どんなパンが好きか聞いてなかったから…サンドイッチとかにして、いろいろ作ったの」


・・・とかにして ?


「・・・パンなら何でもいける」


「待ってね」


祥華がしおらしく、弱々しい笑みを残してリビングから飛び出して行った。



・・・



・・・キャラが不明



だが……



最高に幸せな気分。



・・・



俺は…


祥華とキスするような身分だったのか ?


ははっ…


身分って…


・・・なに時代だ


・・・



……………………………………………………


 


うおぉぉぉぉー



ペトコ・パークのスタンドが爆発した。



0ー2ツーストライクからの3球目。


 

全米選抜の3番バッターが豪快にヘルメットを飛ばして尻もちを突いた。



101.9マイル。


・・・163.9922


 

西崎が三塁側スタンドに右手を突き上げて、ゆっくりとマウンドを降りる。


・・・


ダグアウトに戻る大沢と並んで、一言二言言葉を交わしている。


・・・


その二人の間を押し退けるように駆け抜けた水野が、ダグアウトで待つヒロとハイタッチをしていた。



・・・



祥華の指先が右の頬を撫ぜた。


・・・あれ ?


同時に左の頬も何かが伝った。


驚いて頬を触ると、指先が濡れた。


・・・


俺は…


祥華の腕の中にいた。



………………………………………………



目覚めた時、すでに陽は傾いていた。


祥華と出逢った頃の夢を延々と見ていた。


「大丈夫 ? タカさん」



えっ ?



・・・祥華 ?

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