投手力も打撃力も〜
4分割の静止映像は僅かでも変化を感知すると、時刻表示が白から赤に変わる。
アラームを設定する事も出来た。
つまり人が現れると知らせてくれるのだ。
時刻表示は16時を回った頃から頻繁に赤くなった。
最も多いのが地下駐車場につながるエレベーターの扉。次いでマンションの入口。
当然だが非常階段通用口の映像は一度も赤くなっていない。
任意の映像にポインタを合わせて確定するとその映像が拡大する。
画質は明るく鮮明で、人相の判別も容易かった。
防犯カメラの映像を延々と見続ける。
今や刑事には欠かせない主要な作業だが、これほどまでに鮮明な映像にお目にかかった事はなかった。
“ いんふぉーまんと ” の仕事は、驚くほど早く、完璧なクオリティで提供してくれた。
ホントに中学生なのか ?
どういう育ち方をすれば、こんな中学生になるんだろうか。
…なんて出過ぎた穿鑿に思いを巡らす事自体 “ いんふぉーまんと” にとっては迷惑な話なのかも知れないな。
今は提供された最高のスキルを決して無駄にしないよう監視するのみだ。
『さあ一回裏、ホワイトベアーズは先発マウンドにリリーフエースの柿田智秋を送り出しました。柿田は日本シリーズ4連投にして、今シーズン初先発。まさにホワイトベアーズは背水の陣です』
・・・柿田
舞台を福岡に移した第3戦、しろくまは死闘を制した。
延長15回、6時間を超える投手戦。
15回、水野が気迫の2ランを放って試合を決めた。
だがこの激闘で、月島5イニング、鳥越3イニング、オルトン1イニング、柿田3イニング、大石2イニング、そして最後は第1戦に先発したエース草薙まで投入して日本シリーズ初勝利をもぎ獲った。
第3戦を獲るために主力ピッチャーを次々と注ぎ込んだしろくまは、そこで力尽きた。
第4戦、マトリックス打線はシリーズ新記録となる9本ものホームランをスタンドに叩き込み、しろくま投手陣を滅多打ち。
2 ー 17の大差で日本一に王手をかけた。
〜 マトリックスと戦力を比較したら、一目瞭然です。守備力と走力は互角ですが、投手力も打撃力も比較になりません 〜
驚いた。
完全に優深が予想した通りだった。
優深が言ったように、打線の迫力、投手層の厚みには圧倒的な差があった。
機動力、守備力は負けていないが、マトリックスもそこは超一流。
しろくま自慢のセンターラインの守備だって互角。
結局、チーム力には相当な差がある。
どう藻掻いても、日本一は今晩で決まるであろう。
『ベテラン柿田、見事なコントロールです。初回、マトリックスの1、2、3番を3つの内野ゴロに仕留めました』
・・・頑張れ
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