風薫る秋（とき） “あぶさんと呼ばれた男”の裏側

リアル美女と野獣

「あらお父さん、顔が恵比寿様よ」

「祥華さん、おはよう」

「おはよう、なに新聞にデレデレしてるのー」

ママがソファの後ろにまわって、タイセーさんの背後からハグした。

顎をタイセーさんの肩に乗せている。

・・・溶ける

タイセーさんの顔 …見てられない。

・・・まるで sitcom

あんなこと ……

優深には ……絶対ムリ。

相変わらずママって最強、しかもモデルみたいだし。

ファッションの事はよく分からないけど …

今だって ……

一見、無地のグレー …でもよく見ると何か幾何学的な模様が入っているカジュアルだけどすごくオシャレなブラウス。

血の色（ボルドー）のアシメントリースカート。

何故かモスグリーンのストッキングが何気にいい感じ。

・・・センスいい

これにお出かけの時は、クラシカルなビジネスバッグを片手に ……時々大きなハットを頭に乗せて ……

背が高くて細くて小顔。

メイクなんてぜんぜんナチュラルなのに肌はぷるぷる。

ママは今年38歳。

・・・

妖怪だ。

タカさんと並ぶとリアル美女と野獣。

タカさんも大変。

でも不思議。

どうして二人は結婚したんだろ ?

大学の同級生だったのは知ってるけど ……

世界観とか価値観とか違い過ぎる気がする。

タカさんなら、もっと ……

・・・

そう、華奈子さんみたいな穏やかなタイプが好きそうだけど ……

やっぱりあんな風に、妖術かけられちゃったのかな ?

んー可哀想 ……

絶対、ママの方が積極的だったんだろうな。

ママのメンタルには、タカさんオーラが不可欠だから ……

タカさん ……迎えに来ないかな ?

・・・

無理に決まってる。

タカさん、忙しいし ……鈍感だし ……

優深が何か仕掛けないといけないかな ?

キューピット ?

・・・そうゆうの苦手だなぁ

スマホにメモっておけば、いいアイデア浮かぶかな ?

「わぁー、くるみのベーグル」

妖怪がこっち来た。

「美味しいよ」

「優深ちゃん、おはよう」

「おはよう」

・・・ホント綺麗

最近、またレベルアップした ?

「ところで優深ちゃん、志木さんって知ってるでしょ ?」

・・・シキさん

確か ……

タイセーさんの友達で ……

南洋大美術科出身の天才彫刻家で ……

凪紗さんのお兄さんで ……

タカさんと同じ歳くらいの、繊細そうなおじさん。

タカさんとは正反対っぽい人。

「・・・うん」

「その志木さんが優深ちゃんに会いたがってるのだけど、今夜にでもどお ?」

・・・えっ ?