好奇心


ベッドに潜り込んでいつものアプリを開いた。

日本史学習アプリ。

タイセーさんのオススメ。

最初、嫌だったけど ……意外と面白い。


2年前、暗記が苦手な優深が漢字の単語帳と睨めっこしてたらタイセーさんに言われた。


「テストで良い点を取るための暗記ならしない方がいいよ。効率が悪い。暗記力をつけたいなら、好奇心を刺激してやる方がいい」


「こうりつ ? こうきしん ?」


「そうだよ。これ知りたいっ ……あっ分かった ……もっと知りたい ……あっ分かる ……あっ分かった同士が繋がった ……ってね」


「つながった ?」


「そう。分からなかった事が分かるようになって、また一つ分からなかった事が分かるようになって、それぞれが繋がって、わぁーって思う。そうやって広げていくと、どんどん繋げたくなっていく。これが好奇心 」


「そのためには何を勉強すればいいんですか ?」


「優深さんはまだ3年生だから、マンガがいいんじゃないかな ? いろんな学習マンガがあるから好きなの選べばいいよ。漢字の暗記なんてするより有意義な時間を過ごせると思うよ」



タイセーさんはそう言って、PCを開いていろんな学習アプリを見せてくれた。


その時、優深は小学生高学年向けの「宇宙探検アプリ」と「コンピュータ言語アプリ」を選んだ。

どっちも絵がきれいだった。


「あっ、こっちに無料アプリがありますよ ?」


優深がそう言うと、タイセーさんは困ったような顔をした。


「それはいいから ……ついでにこれも入れておくから、気が向いた時に見てほしいな」


それが日本史学習アプリだった。



タイセーさんは、無料をぜんぜん信用していない人だった。

無料で得られる情報や知識は見るだけ時間の無駄。時間を有意なものにしたければ、必ずお金を払わないと時間を捨てる事になっちゃうと思っているみたいだった。


その感じ …最近、優深も分かって来た。




苦手な歴史 ……

だったけど、タイセーさんの言うとおり、つながれば確かに好奇心が刺激される。


日本の歴史 ……


はるか昔、原始人ぽい人々が狩りをして暮らしていた …… いつの間にか国ができて天皇が偉いことになる …… 次は、将軍が偉くなる ……さらにまた、天皇が偉くなって現在に至る。



ややこしいのは平安時代 ……


はじめは天皇が偉かった …… 次に天皇を補佐する人が偉くなった …… 今度は天皇の先輩(上皇)が偉くなって最後は武士にやられてしまった。



では何故、武士の時代に ?


平清盛 ……源頼朝 ……足利尊氏 ……織田信長 …… 豊臣秀吉 ……徳川家康


本多忠勝って強いなぁ ……


真田信繁カッコいい ……



今度は何故、武士の時代が終わった ?


ペリー …… 吉田松陰 ……西郷隆盛 …… 大久保利通 …… 勝海舟 …… 坂本龍馬


久坂玄瑞ってすごく賢い ?


高杉晋作 …めちゃくちゃな人 ?


もしかして吉田松陰って …もの凄い人。



ストーリーがつながれば、好奇心が刺激される。

ドラマを知りたくなって、キャストが気になるようになる。

暗記しなくても、だいたい憶える。



「テストで良い点が取りたかったら、学校の授業を真面目に受ければいいんじゃない ?」



・・・やっぱりタイセーさんが一番凄い



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