神のような存在
日が暮れようとしていた。
そう思った途端、あっという間にリビングが翳り始めた。
“ 秋の日はつるべ落とし ”
立ち上がって、蛍光灯のスイッチを入れる。
また一日が終わっていく。
国仲美摘さんが行方不明になって10日になる。
絶望の日々。
俺たちはその居場所を知っている。
検察さえもそれを知っている。
にもかかわらず ……
すぐに助ける事も出来ずにいる。
ハッキングによる証拠集めをするしか術がない。
悪魔を恐れる蓮見一族が、総力で各方面に圧力をかけている。
権力者が挙ってトップの顔色をうかがっている。
政治家が ……官僚が ……そしてマンションの最新セキュリティが悪魔を庇護している。
ジョーも ……島も ……梨木も ……
検察官として ……警察官として ……
怒りと嘆かわしさと情けなさで言葉を失っていた。
「インフォーマント ……でんきねずみに会えないかな ?」
「会ってどうする ?」
島の無感情な眼差しが俺に向けられた。
「直接会って、すべてを話して捜査の協力を要請する。しっかりと信頼関係を築ければ、今後もこんな悲劇が未然に防げるようにもなるんじゃないか ?」
でんきねずみが簡単にパンタグラファーの端末に侵入出来るのなら、蓮見一族が千葉洋平の犯罪を隠蔽して来た過去が掴めるかも知れない。
来橋教授や迫田の端末からだって証拠が掴めるかも知れない。
島が僅かに息を吐き出した。
「難しいところだな。まあ、そのへんはシモの判断に任すしかないけど …ただ、でんきねずみって捜査協力を要請出来るような年齢に達してないような気がしてる」
「学生 ……高校生とか ?」
ジョーが呟く。
「俺の感触だともっと下だな ……メールのやり取りを数回しただけだから、確信は持てないんだけど ……なんか幼さを感じるんだ。まるで社会情勢に疎いって感じだったな」
「中学生 ……なのか ?」
確かに中学生に捜査協力の要請なんか出来ない。
「だから確信はない。ただ、ホワイトハットの連中もそんなような事言っているんだよな。もしかしてローティーンじゃないかって。千葉洋平はあくまで30年前からの天才。その同じ時代で追いかけると確かにとんでもない悪魔。やつを追い詰めようと10年20年と研究し続けて来たハッカーたちからすれば、とても太刀打ち出来ないレベル。しかも何より報復が怖くて迂闊に近づけない。
だけど、所詮悪魔もホワイトハットたちも30年前から構築されたスキルなんだ。
もっと若い奴らは違うらしい。逆に言えば、今の時代の天才から見ればパンタグラファーのスキルなんては簡単に抑え込めるし、攻撃だってブロック出来るから、報復なんて怖くない …報復自体があり得ない。
でんきねずみは最新の国家レベルのセキュリティプログラム、国家レベルの追跡プログラムを簡単にパンタグラファー側のプログラムに組み込んでしまった。
パンタグラファーがコンピュータネットワークの悪魔なら、でんきねずみはひとりスーパーコンピュータ ……神のような存在かも知れない ……ってね」
〜 私はパンタグラファーと闘う者であり、下村貴史さんの味方です。
私はすでにパンタグラファーの不正アクセスのパターンを、ある程度把握したと思っています。
少なくとも今後、下村貴史さんのネットワークにパンタグラファーが侵入する事はありませんので、その点は心配無用です。
下村貴史さんのネットワークは必ず私が守ります 〜
・・・何者なんだ
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