天才ハッカー
・・・結局
来橋教授の …迫田の思惑通りになるのか。
蓮見や巻田が動くのを待つしかないのか。
「どっちにしろ県警のお膝元で殺人事件が起きてるんだ。蓮見本部長も巻田刑事部長も当分こっちへは戻って来れないだろう。もしかしたら人を使うか、夜中にこっそり動く可能性もあるけどね」
俺の考えを読んだようにジョーが言った。
・・・当分 ?
クソッ ! どうやって被害者を助ければいいんだ !
「俺もシモの話にドタマが真っ白になったけど、要するに裁判所を納得させる証拠を集めるしかないって事だろ ? ……逮捕状を取る必要などない、捜索令状とか差押令状が発付されればいいんじゃないか ? 多少ショボくても、ジョーが令状をぶん取れるような証拠を山のように掻き集める。結局俺に出来るのはそれしかない」
・・・うむ
「そうだな。千葉家の玄関を突破すればいいんだ。確かに逮捕状である必要などない。ヤツの部屋で被害者を発見次第、緊急逮捕すればいいんだからな。ところで島、令状請求出来る当てはあるのか ?」
島が俺の質問に顔を顰める。
「証拠能力のない、違法なデータならいくらでも揃うだろうな。合法ものは状況証拠ばかりってとこだ」
「ハッキングか ?」
「まあ、そうだが ……証拠認定されそうな合法なハッキングだってある。それを違法なハッキングで裏取りしながら、地味に積み上げていくしかない」
あとは裁判所の裁量次第か。
捜索令状の請求なら、それでも可能性はあるか ……
「しかし ……島もいつの間にか一流のハッカーなんだな」
俺の称賛に島がまたしかめ顔を作った。
「バカ言えっ ! 俺に ……鑑識にそんな暇があるわけないだろ。全部、ホワイトハットに協力してもらってんだ !」
島が呆れたように唾を飛ばした。
「ホワイトハット ? ……そういう事か」
セキュリティシステムの提案や警察への情報提供などコンピュータシステムのハッキングを善意に基づいて行うハッカーをホワイトハットと言う。
そういったスペシャリストを上手く捜査に活かすところが、如何にも島らしい。さすが本庁のエース …………ん ? そう言えば ……
「・・・もしかして島の知り合いにインフォーマントって名乗るハッカーがいるか ?」
ふと、気になっていた事を口にしてみた。
「ああシモのところにも現れたのか ? それは俺がやり取りしてるホワイトハットじゃない。不思議なんだが、最近になって突然現れた謎のハッカーだ。俺にも
・・・個人メール
「パンタグラファーも ……か ?」
・・・何者なんだ ?
「実はそれらしき存在が、ホワイトハッカーの間でも話題になっていたらしい。彼等の世界ではパンタグラファーをも凌ぐ天才ハッカーだとすでに伝説化されているようだ。確か …… “ でんきねずみ ”と名乗って、ここ二、三日はパンタグラファーの不正アクセスを妨害しまくっているという話だ」
・・・でんきねずみ ?
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