正攻法で正面突破

 

「シモさん ? ……なんですか、この番号 ?」


「知り合いの携帯からかけている」


「いろいろ噂になってますが …… 大丈夫なんですか ?」


慌てて声をひそめた。

機捜の友川 ……飲み仲間だ。


「ああ ……頼みがある。マッサンか綱海か白石に連絡取って、ここに来るように伝えて欲しい」


「俺を経由するって事は相当訳ありですね。 ……どこです ?」


なんだかんだ、余計な口を利かないのが助かる。


「白山公園 ……東側の入口」


「先ずマッサンから当たってみます」


「あっ、クリップ持参って言うのも付け加えて欲しい ……」


「クリップですか ……シモさん大変な状況じゃないですか ? とにかくすぐ連絡します」


「スマンな」


「了解ッス」


切れていた。



頼れば、何も聴かずに先ず動いてくれる。


多くを語らずとも、察してくれる。


そんなヤツが俺の周りにも何人かいる。


そいつらと、たまに酒を飲む。


気のおけない時を過ごす。


人の繋がりなんて、それだけで十分だと思える。



帳場が立って4日目。

事件は膠着状態のはず。

会議では毎日、課長や管理官が猛り狂っている事だろう。


ピリピリした本部の空気。

真面目な白石はともかく、マッサンや綱海ならそこから逃げ出す為に、喜んで迎えに来てくれるはずだ。


トシのスマホを使って、一課の連中に直接電話をかけるのは避けたかった。

そして捜査状況がわからないまま、闇雲にジョーや島に接触したくない。

蓮見や巻本が捜査のミスリードを誘導するような罠を仕掛けているかも知れない。

悪魔がネットワーク内でそれをやっているかも知れない。



まずは現状把握、それから二人に直接会って真実を話す。

担当検事と資料分析官。

二人とも被害者救出のために、寝ずの3日間だったはずだ。

そこに真の情報を加える。


俺たちの仕事は、1秒でも早く被害者を救出する事。

まず真っ先に弱い者、苦しむ者を助け出す。

そこに “ 今さら遅い ” という考えはない。

とにかく1秒でも早く。

これが俺たちの使命。

隠蔽の証拠集めなんか、その先の話だ。

そのスタンスは二人も同じはず。


だから ……


裁判所を納得させる証拠を見つけて、何としても洋平の逮捕状を取る。

そこはジョーと島の力を信じる。



俺は ……


千葉正利と直接会って、自宅に監禁されている少女がいる事を知らせる。

被害者救出に協力してもらう。

父親の誇りを信じる。


いろんな障害があるだろう。

だが、正攻法で正面突破。

3人がそれぞれに積み重ねて来た経験。

それを武器に障害を乗り越える。

それが俺たちの仕事であり ……


正義だ。

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