慮るプレー

 


内角低め …



外角低め …



どっちもギリギリのコース。



そして内角高めの釣り球を振らせた。



重苦しい雰囲気でスタートした初回、草薙はレッドシャークスの3番バッターを3球でねじ伏せた。



・・・さすがエース




初回、草薙の投げたボールは全て140キロ台後半のストレートだった。


ストライクは全部低め、そして変化球は1球も投げていない。


これは、急遽一軍に招集された捕手、吾妻をおもんばかっての事だろう。

いきなり降って湧いたような、CSスタメン。

当然緊張するし、動きが硬くなる。

そこに、草薙のキレのあるスライダーやスプリットが来たら、受けるだけでアップアップになる。

もし初回からパスボールなんて事になったら、ますます硬くなり、それこそ試合が壊れかねない。


そのあたりをきちっとフォローする。

草薙は限られた武器で、最善を尽くす。

そうする事で、チームが …そして自分自身が後々救われる事を知っているのだ。




トーレスがマウンドを降りる草薙に声を掛け、その場で回れ右をしてダグアウトに戻るナインを迎えていた。


大袈裟なお迎えに沖野が苦笑いを浮かべている。

コータとケースケも笑っていた。



いきなりの悪送球。


それをさらっとカバーしてくれた仲間たち。


仲間のミスから決して傷口を広げさせてはならない。


語る必要のない “ 助け合いの精神 ”


結局、選手同士の絆というのはそこに尽きる。


このあとトーレスは当然奮起するし、自分もチームメイトを慮るプレーを心に誓う。

慮れるプレイヤーに成るべく、より一層のレベルアップを自分に求めて行く。



これが ……



石神さんが言ってた “良い化学反応 ” ってやつか。



だとすれば ……



この化学反応の源は間違いなく大沢 ……



そして遠い昔の深町監督と ……



ヒロだ。



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