放っておけない顔



 唇の感触は続いていた。



 ・・・夢か



 祥華の鼻息が頬をくすぐった。



 ・・・現実 ?



 ん ?



 柚子の香り ?



 ・・・ホワイトチョコ



 俺は祥華を引き寄せようとして、腰に手をまわした。


 その瞬間、唇が離れた。



 ・・・



 なぜびっくり顔 ?



「・・・う、うんと」



 ・・・うんと ?



 そこで困られても…困る。



「放っておけない顔してたから…」



「放っておけない顔 」


 って ?



「サンドイッチ」




「えっ ?」



「いろいろ作ったの」



「サンドイッチ ?」



「前にパン好きって言ってたから」



 ・・・



「・・・ああ、言った」


「でも、どんなパンが好きか聞いてなかったから…サンドイッチとかにして、いろいろ作ったの」


 ・・・とかにして ?


「・・・パンなら何でもいける」


「待ってね」


 祥華がしおらしく、弱々しい笑みを残してリビングから飛び出して行った。



 ・・・



 ・・・キャラが不明



 だが……



 最高に幸せな気分。



 ・・・



 俺は…


 祥華とキスするような身分だったのか ?


 ははっ…


 身分って…


 ・・・なに時代だ


 ・・・


 テレビが喚いていた。


 ・・・うるせーな


 切るか ?



 画面に目をやると、塁上の水野が映っていた。



 ワンアウト三塁。



 打席には大沢。

 

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