金田監督の解任

 和倉は一日でも早くマウンドに立ちたかった。

 試合で投げる自分の姿を、楽しみに待ってくれている人達がたくさんいたのだ。


 家族、高校のチームメイト、友達、外科の先生、看護師、リハビリの指導者、そして最高の恩師。


 交通事故で重症を負い、時には自暴自棄になった自分を、いつも支えてくてた人達。


 だから金田監督の育成方針が、金田監督の私利私欲から出たマヤカシと知って、とても許す気にはならなかったのだ。



“ もし ”


 なんて言葉は無意味。

 そんな事は分かっている。

 

 しかしもし・・、和倉があとひと月だけ我慢していれば、おそらく転学はなかった。

 そして和倉を失った事で、狂い始めた俺の青春も、もっと煌めくものになっていたはずだ。


 それは、本当に僅かな“ 隙間 ”だった。


 秋のリーグ戦、南洋大は五位で終わった。

 その結果をもって金田監督があっさりと解任されたのだ。


 和倉がいなくなったひと月後の事だった。




 この時の真相は後に知る事なる。

 

 成績不振による解任は単なる“ あと付け ”だった。

 実際は和倉成亮の退学を知った関係者・・・がこれ以上の被害を出さない為にとった緊急措置だった。


 水野薫、杉村裕海、大沢秋時、西崎透也、和倉成亮。

 

 その他の “ 精鋭揃いの一年 ”

 

 石神渉が特命を受け、集めた男たち。



 これには秋庭聖一、久住恭平の企てた巨大なプロジェクト計画が絡んでいた。

 

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