階級と職制

 ちゃちゃちゃっとシャワーを浴びて、ベッドに倒れ込んだ。

 

 京川の復帰戦。

 見たいとは思ったが、すぐに寝落ちするのが目に見えていた。

 それに大沢がまた一軍登録から外れたらしい。

 ネット情報でそれを知って、試合を見る気が失せた。

 

 京川復帰で予想はしていたが、大沢を外して京川が活躍し、千葉のニヤけた面を見るのだけは避けたい心境だった。

 今日くらい、ちゃんとベッドで寝ないと心身の疲労回復も出来ないだろう。

 

 疲れているのか、いないのか。

 自分でもよくわかっていないが、特に〝濃厚な階級社会臭〟には今だにアレルギー反応を起こす。

 今日は伏魔殿の魔物七人と対峙したのだから、どこかにダメージは受けているはずだ。

 おとなしく寝てしまうのが得策だろう。

  

 ・・・・・・


 

 やはり一瞬で落ちたか。

 時々、携帯の着信音を聞いた気がしたが、動けなかった。

 しかし警電の方ではない。

 警電なら熟睡していても、身体が勝手に動く。


 ・・・本当に熟睡していたか?


 魔物のひそんでいる殿堂を彷徨っているような眠りだった。


 

 〝 では自宅謹慎を命じます 〟


 

 〝 退席してください 〟


 

 〝 退席しなさい 〟


 


 ・・・強きに弱く、弱きに強い警察文化。


 

 ・・・階級・・・職制・・・上意下達・・・絶対服従

 

 

 警察において、職制(本部長、部長、次長、課長、係長など)のほか、階級(巡査、巡査部長、警部補、警部、警視など)が存在するのは、部隊活動が前提とされているからと言われている。


 自衛隊を例に挙げるまでもなく、実行部隊には常に殉職や負傷離脱が想定される。さらに二十四時間対応も必要なことから野戦・夜襲に備える必要性も生じてくる。


 常に最上位者が欠ける事を想定しておかないと、指揮系統が混乱し錯綜した状態になる。直ちに第二位者がミッションを引き継ぎ、部隊を指揮する体制を敷く必要がある。

 階級を付与しておけば、上下関係が明白となり合理的な組織運営がスムーズに遂行される。


 警察組織に〝階級〟というものがあるのは、あくまで有事における実行部隊の生存率をあげる為の合理的手段であり、平時においては〝職制〟とあいまって二重の鎖となり、上意下達の文化を強固で威圧的なものにしてしまう。

 二重の鎖は有事なき密室で、歪な魔物と化しさらに肥り続けている。


 なんて、批判精神旺盛な能書きを垂れてても、しょせん負け犬は負け犬。 

 

 

 ・・・俺は愚か者以外の何者でもない


 

 階級社会(縦割り社会)に歯向かうと、どういう目に遭うか。

 

 十六歳で懲りた筈なのに・・・

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