驚異の1年生バッテリー

 一年の夏。

 甲子園大会の地区予選はベスト8で終わった。


 この頃には大沢も怪物ぶりを発揮するようになっていた。

 バッティングは大味だが、確かに底の知れないポテンシャルを感じさせていた。

 そして雑なバッティングとは違い、捕手大沢秋時には堅実さがあった。その上、目を疑うばかりの強肩の持ち主だったのだ。


 俺のピッチングも大沢が受けることで、よりレベルアップした。


 俺たち新チームは、秋の新人戦で県のベスト4まで勝ち進んだ。

 三位決定戦で負け、東海リーグには出場出来なかったが、地元は大いに盛り上がった。


 

 俺も大沢も打ちまくっていた。


「打線の中軸を担う驚異の一年生バッテリー」


 地方紙では特集を組まれるほど、注目され始めていた。


 南洋市の高校は、いまだ一度も甲子園出場を果たしていなかった。


 まだ一年の俺や大沢の活躍に、地元の期待は一気に膨らんだ。


 ~ 南洋から初の甲子園出場 ~


 グランドには連日たくさんのギャラリーが詰めかけた。

 練習の合間にマスコミの取材を受ける。

 まるでアイドル扱いだった。

 

 俺はそんな毎日を当然のように送っていた。



  

 この高校一年の秋が・・・。


 たった十六歳だったこの時が・・・。


 今思えば、この時が俺の野球選手としてのピークだったのかも知れない。



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