天狗

 大沢、杉村との出会い。


 南洋北高校でこの二人に出会わなければ、俺も親父と似たような人生を送っていたかも知れない。


 その意味では、俺の人生を大きく切り開いてくれたのは間違いなく親父だ。


 


 後にプロとなり、ホワイトベアーズの四番バッターとして、何度もリーグ優勝に貢献した大沢秋時。


 南洋大のエースとして、弱小だった野球部を日本一に導いた杉村裕海。


 俺の青春は、間違いなくこの二人に牽引される形で濃密な日々となった。 


 


   


 高校一年の春、初めて会った時の二人は、まだそんな大それた事を成し遂げるほどの選手には見えなかった。


 この時のピッチャー杉村の実力は、俺の足元にも及ばなかっただろうし、バッターとしての大沢も雑なバッティングが目立ち、俺の方が監督に信頼されていたように思う。


 


 俺の投手としての実力は、野球の名門と言われていた南洋北でもそこそこ通用した。


 140キロを超えるストレートと、低めにコントロールされたスライダーはすぐに即戦力の評価を得た。


 俺は一年の夏から、背番号10をもらい第二投手として何度も登板し、三年生のエース以上の好投を見せた。


 


 それこそ物心つく前から、親父にシゴキ倒されてきた。


 そしてそれ以上に自ら努力を惜しまなかった。


 俺の活躍は〝そんなこんな〟が一気に花開いたようだった。



 ・・・そしてたぶん天狗になった


 


 

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