第108話 優勝賞品授与

「いやあ、すっかりハマってしまいましたな。そろそろ賞品の授与をしますかな?」

「ええ、頃合いではあると思いますよ。これ以上遅いと皆寝てしまいそうですし」


 魔王と二人、スライム君の片手で摘める料理を頂きながら一通りゲームを楽しむ事も出来た。

 俺と魔王以外の人達はというとツマとムスメが考案したデスゲーム、抜いた棒に書かれた文字というか数字の分だけカップのお酒を飲んでいく魔王ジェン〇と名付けられた死亡遊戯により、既にやられているような姿を見せている。


 御機嫌な彼らが言うには、独特の緊張感と〇ェンガ特有のドキドキ感が相まって、気分が高揚するのだとか。普段あまりお酒を飲まない人もお遊び感覚で参加している為、無理だけはしないようにさせねば。

 全員に聞こえるように一度大きな声を出して集合を呼び掛けるとふらふらな足取りでやってくる者もいる、魔王ジェ〇ガは今日限りで封印してもらおう。


 全員が立っているとよく見えないので、俺と魔王、ツマにムスメがポッドの前へ並び、その俺達を囲むように住人達全員に座ってもらった。


「それではこれより武闘大会優勝者、並びに遊戯大会優勝者へ賞品の授与を始めます。名前の呼ばれた人は魔王様の前へ来るように! いいね!?」


 俺の問いかけに酔っ払い集団の怒号にも似た歓声が返ってくる。テンションが高いのは良い事かもしれないけど、大丈夫かな? 普段、大人しい子ですら割と酩酊しているとは。


「それでは武闘大会初代王者チーム! ペイトン! ゼルシュ! オレグ! 前へ! はい、全員拍手!!」

「はいっ!」

「おうっ!」


 名前の出た三人が威勢のいい声と共に勢い良く立ち上がると全員から拍手と歓声が湧き上がる。


 三人共お酒に酔ってはいないように見えた事に安堵の息をついていると、堂々と胸を張って歩んで来た三人は魔王の前でひざまずいた。


 彼らが膝をつくと拍手が止まり静寂が一帯に生み出され、独特な緊張感を持って息を潜めるようにしている魔族達に視線をぶつけられる。

 進行をしろという彼らの無言のサインを受け取り、魔王に視線を移した。

「それでは、これより賞品の授与が行われます! っていっても魔王様、そういえば何を渡されるのか、俺知らないんですけど……」

「フフフ……私からの優勝賞品は……、これだァ!」

 光源のそれ程多くない宴会会場、その少し薄暗い空間を切り裂くような光が魔王の右手から生み出されると、あっという間に光が収束していく。

 その光で眩んだ目が再び戻ってきた薄暗さに慣れていくと、魔王の右手にはデフォルメされた何かのキャラクターのバッジのような物が三つ並んでいる。


 どうやらこれを見てその価値を知らないのは俺だけらしい。当然かもしれないが。

 周りを囲うようにして座っている者達の中には魔王が取り出した物を指差し慌てるように立ち上がった者や、大きな声を上げてまるで信じられないと目を見開いていたり大口を開けていたり……。

 これを貰い受けるペイトン達も、それを見て声には出さないが驚きの表情というか呆気に取られている。


「魔王様、これは……?」

「これは魔王バッジ。私が認めた戦士に送る、所謂勲章ですな! 魔界の私の統治下の場所では、これを持つ物は貴族や魔王軍幹部と同等の立場を得るというシロモノですぞ!」

 それはつまり、今ペイトン達は名誉市民のような物として認められたのかな? 魔王は一人ずつ手を貸して一度立ち上がらせると彼らのつけている服や防具の胸元や腰にバッジをつけていく。それにしても可愛いデザインだなぁ……。


「ちなみにこれ、ムスメがもっと小さい時に描いた私の似顔絵をモチーフとしてバッジにしております。上手い物でしょう!」

「ヤメテー! 今はもっとウマイから!!」


 ペイトンらにバッジをつけ終えた魔王がスタスタとこちらへと戻ってくる際に、得意げな笑顔で俺にそれを伝えてくると、近くから沸いた叫び声がそれ以上のムスメ自慢を抑制した。彼はムスメの悲鳴にも似たその声を聞いて笑いを噛み殺している。


 そして、彼はくるりとペイトン達に振り返ると彼らを力強く見据え、その後俺達を囲う魔族全員を一瞥して頷いた。


「生まれも育ちも、種族すらも違う君達の戦いぶりは素晴らしい物だった。出来るならば、大会に出場した者全員に同じ物を渡してもいいと思える程に。優勝した者もそうでない者も、これからも励み給えよ!」

「ありがたき幸せ!」


 多少震えるようにどもりながら声を絞り出した三名の言葉に、満足そうに頷いた魔王が俺の隣へと戻ってきてにやりと笑う。

「それでは、次はツマですな。ツマは何でもホリ殿が選んだ一名を代表して呼んで欲しいようですよ? 何を渡すかは私も知りませんが!」


 ツマの方へ一度視線をやると返答するように、にこりと笑顔で頷いた。


「わかりました。それじゃあ誰にしようかな……」


 魔王の声が聞こえたのだろう、どの魔族達も自分達が選ばれるのではと緊張が走っていて、俺の方を様々な感情が籠った目で見ている。

「うーん、それならペトラで。色々と尽力してくれた治療班の代表として彼女に来てもらいましょう。ペトラー?」

「えっ! 私ですかッ!!?」


 油断をしていたのか、それとも自分は選ばれないと思っていたのか。彼女は周りから一斉に向けられた視線に戸惑い、あたふたとした素振りをしている。


「ペトラ……、頑張れ……」

「ペトラ、落ち着いて」

「う、うん……」

 トレニィアとシュレンの二名に肩を叩かれ、送り出されるように一歩前へ歩き出すと大きく息を吐いてゆっくりとこちらへ向かってくる。


 ツマがペトラを迎えるように一歩前へ出るとにこりと笑顔を向けて彼女を待ち受け、やってきたペトラは緊張からか、そのまま腰が砕けたように力無く両膝をついた。

「フフ、私相手にそれ程緊張なさらなくても良いのよ? それではペトラさん、私からの気持ちを受け取ってくれるかしら?」

「は、はい! 喜んで!!」


 始めてポッドと会った時と同じくらい興奮をしている彼女、ツマは一度彼女を落ち着かせるようにその頭を撫でるとそのまま右手を彼女の頭から離し、その場から少し移動すると白い輝きを生み出し始めた。


「こう言っては何ですが、女性が来てくれて良かったわ。どうせなら女性に受け取って欲しいと思っていた物ですし」


 輝きが治まりながら出てきた物は割と大き目の物だった。

 それは色々な装置が搭載された一つの机。目につくのは滑車やペダル、それらと連結するように上がドーム状になっている円柱の形をした筒のような物が。


 俺がそれを注視している内に同じような物を一つ、二つと出して並べるツマ。


「これは何かの機械……ですか? それにしてもこの物体は……」

「フフフ、これは魔界が誇る発明家! エジッスーンの作品の中でもベストセラーと言われるシロモノ! その名も、『ツルノー・ンガエシ』ですわ!」

「デスワ!!」


 黒いドレスの裾を翻すような勢いで振り返り、効果音でも出しそうな勢いでポーズを取ったツマと気付いた時には横に並び、同じようなポーズをしているムスメ。

 要領を得ない解答に俺以外の者達も戸惑っているところから見ても、彼らもコレがどういった物か知らないようだ。


「お、おう……?」

「フフフ、驚くのも無理はありません。この機織り機は魔界でも予約が数年先まで埋まっている程の人気商品ですから! 実は私、ずっと考えていたのです。この拠点に足りない物は何かと」


 力を溜めるようにして強く拳を握り締めていたツマが何かを解き放つように強い眼差しでびしりと拠点の住人達の方へ手を広げ思いの丈をぶつけようとしている、そしてそのポーズをマネするムスメ。


「ここの者達は皆健康的で、特に女性達はそれに加えてどの子も髪の艶、肌の細やかさも素晴らしい。ですが、一つだけ言いたい事があるのです!」

「と、言いますと?」


 論じている内に、どんどん熱くなるツマに問いかけると彼女はつかつかとペトラの横までやってきて彼女に立つように促した。


「この衣服です! 仕方がないとは言え、皆着用している衣服が全体的に痛んでいます! これではこの子達の魅力が半減してしまう事は明白! こんなにいい毛艶をしているのに何て勿体ない……」

「はわ……」

 ペトラの体、布で覆われていない部分に手を這わせて優しく撫でていく彼女とあちこち撫でられて恍惚としているペトラの膝が笑っている。なんて撫でテクニックをしているんだ、流石魔王の妻。


 ツマはそのまま最後にペトラの頭を撫でると、再度力強く俺を見据えてきた。

「その問題の根本は私にもわかっています。布地自体がここでは貴重品でおいそれと使えず、入手経路もホリさんが偶に行く人里からのみだから、でしょう?」

「そうですね、皆には申し訳ないんですがどうしても手に入れられる量も安定しませんから。出来る限り揃えようとは思っているのですが……」


 グスタールに行く度に購入はしているが、やはり貴重品な上に新品の布はとにかく高い。値段の交渉も応じて貰えない事が多いし、食料や武器に比べて優先度が低かったからなぁ……。

「ええ、ホリさんの努力は十二分に伝わってきます。それでもやはり、布というのは潤沢に有った方が何かと便利なのは歴然たる事実! そこでこの『ツルノー・ンガエシ』が輝くのです!!」

「ノデス!」


 彼女は再燃する熱を言葉とポーズに込めて、三台の機織り機を指差した。


「この機織り機は……、見た方が早いですね。うーん、何かいい毛皮がないかしら」

「ママ、アノ子達がくれたフォレストディアーのケガワならあるよ!」


 ムスメがツマに向かってぱぁと手を広げて光を生み出すと、その小さな手にはふさふさとした毛が目立つ茶色の毛皮が畳まれた状態で現れた。

「フフ、ムスメちゃんは気が利くのね? 後でゴブリンちゃん達にお礼するとして、これ使わせて貰ってもいいかしら?」

「ウン! アノ子達もイイって言うよ多分!」


 ゴブリン達はツマに視線を投げかけられると高速で頷いている。

 首もげちゃうよ、と思いながらも視線を戻しツマの行動を見守っていると彼女は一台の機織り機の横へ行き、筒のような物へ手を伸ばした。


「この機織り機、使い方は簡単ですわ。まず機織り機の後ろについているこの筒の蓋を開けます!」

 機織り機のような物に連結している筒の上部、ドームの部分は蓋になっていたようで、カパッという音を立てて蓋を開けたツマがその中へと手に持っていた毛皮を放り込み、そのまま蓋を閉じた。


「そして次に、この椅子に座り肘置きの先についている魔石に魔力を込める!」


 ツマの行動を見逃すまいと全員が彼女に向けて視線を集めているところで、ツマはそのまま使用方法の説明を続けていく。

 彼女が魔力を込めた途端、先程毛皮を入れた筒についていたランプが点灯してゴトゴトという振動を生み出しているのが多少怖い。


 一仕事終えたと言わんばかりに汗を拭うような仕草で一息ついたツマが立ち上がり、俺達の視線を一身に浴びたまま魔王の元へと向かうと、一度ワインを飲み込んでまた戻ってきた。

 ランプの光が消えている事を確認したツマは満足そうに頷き、俺達の方へ振り返ると指を一本立てて今しがたまで灯っていたランプをムスメと共に指差した。


「この光が治まったらいよいよです、さぁ刮目して御覧なさい!」

「ナサァイ!」

 ちょっとノッてきたツマと楽し気に倣うムスメの言葉を守るように俺達はツマの周りへと集まり彼女の動向を見守っていると、彼女は一度ペダルを踏みしめてから再度肘置きの魔石へと魔力を込めたようだ。


「最後にここへ魔力を注ぎ込めば準備は完了! このスイッチを……押す!」

「ポティットナ!!」

 彼女が机の上にあるスイッチを押すと、ゆっくりと滑車が回り始めていく。

 それはみるみる内に回転が速まり、慌ただしさを感じる程の速度で回り続けていくと机の上に異変が生まれ、それを見ていた俺達、中には困惑の感情が声になって漏れている者もいる。


 机の上にある筒と連結している小さな箱のような装置から、茶色の糸がまずにゅるりと伸びてきた。

 そしてツマがその生まれてきた糸の先を引っ張り別の装置に結び付けるという行動を数回行うと、何方向からも伸びてきた茶色の糸が瞬く間に織られ始めるという不思議な光景が展開されていく。

 その映像に見惚れているとツマの目の前の机の上に生み出されて来たのは、筒に投入した毛皮と同じ色合いの布。


「これは……、布ですか?」

「そう、この織り機は動物やモンスターの毛皮をなんやかんやして布にしてしまうというスペシャルマッスィーンなのです!」


 なんやかんやの部分を聞いてみたいが、それはエジッスーンしかわからないんだろうなぁ。いや、これとんでもない物でしょ? と隣にいるペトラの表情を見ると驚きと喜びの入り混じった表情でツマの手元にある布を見ている。


 話をしている内に布はどんどん大きな物になっていったが、突然筒の方から何かが噴き出すような音が響くと、滑車の回転がゆったりと、ゆっくりとした物に変わっていく。


「あの毛皮で大体これだけの布が生まれますわ」

 彼女の手にはそれなりの大きさの布地が広げられている。一言断り布に触れてみると多少温かさを持った布はとてもなめらかですべすべとしている。

 肌着に良さそうな質感だな、と俺が感触を確かめ終わるとツマはその茶色い布をペトラの首にスカーフやマフラーのように巻き付けていった。


「この布はあの筒に入れた毛皮の量によって大きさが変わります。大量に入れればそれだけ魔力は使いますが、これで質の良い充分な量の布地が生み出されるでしょう。ホリさん、どうかしら?」

「いや、どうって……。凄すぎて言葉がありません。頂けるなら今この拠点にとって最高の品です、ありがたく使わせて貰いますね」


 満足気に頷いたツマはそのままムスメとハイタッチをしてまるで選手交代のように魔王の横へと戻り、渇いた喉を潤すようにワインの入ったグラスを傾けた。

 彼女の出した物、ツルノー・ンガエシをパメラ始めとする女性陣が熱心に見て調べているが次に行ってしまおう。


「えっと……、王妃様、ありがとうございました! それじゃあ最後に、ムスメさん宜しくお願い致します!」

「オーッ、私は……コレだァ!」


 大きく広げた彼女の両手から魔王達とは比べ物にならない位の光が生み出され、辺り一帯を強烈な光が照らし出す。

 その光はすぐに治まる訳ではなく暫くの時間強烈な光に俺達は晒されたのだが、その眩しさと格闘している間に何かが地面に落ちる音が断続的に続いていた。


 最後に何かがどすんという重量を感じさせる音を出したのを合図に、光はどんどん収束していく中で辺りを確認するとムスメの前には様々な形をしたケースのような物が所狭しと並んでいた。


「これは……? 何でしょう?」

「お、王女様! これはまさか!?」

「これな、うちの城にあったガッキだな。私なりに考えてココに足りない物を用意してやったゾ! カンシャしてくれよな!」


 楽器……? と首を傾げる俺の隣では並んでいる様々なケースに飛びついて中身を確認しているヒツジィ。彼の様子が何かおかしい、傍によると小さく震えているような……? クールな人だと思っていたが、そんな彼が呟くようにあわわと言っている。


「ま、まずいですよ王女様! 楽器の管理は親父の管轄じゃないですか!? しかもこの数、魔王城にある楽器の殆どを持ってきてしまって……! 許可は取っているんですよね!?」

「んー……? アー……、ナイ!」


 弾ける笑顔で告げるムスメ、それを聞いてヒツジィの砕ける腰、両者はまさに明暗が別れるような態度をしている。

「ダイジョーブだって! パパには許可取ったから! ヘーキヘーキ!」

「そうなんですか!? 魔王様!」

「あー……? んー、許可しました……かな!」


 弾けるような怖い笑顔と、項垂れるヒツジィ。

 どうやら高級品のようだし、問題があるようならムスメには申し訳ないけどこれを貰うのは辞退しておいた方が良さそうだなぁ……。


「ムスメさん、折角ですがこれはお返ししますよ。ヒツジィさんの取り乱しぶりからして貰ったら問題が発生しそうですし……」

「エッ……」


「それはなりません」

 俺の言葉を聞いて悲し気な表情を浮かべるムスメ、心にダメージを負っているとスッと立ち上がったツマが強い眼差しでこちらを見ている。


「私達はこれでも魔族を統べる者、一度下賜した物を返してもらうというのは私達の沽券や矜持に関わります。それはなりません」

「いえ、それはわかりますが……。ヒツジィさんの様子から察するに何かまずいのでは? 私達に渡してしまって良い物なんですか?」


 ツマにそう問いかけると彼女は何か明確な答えを返してくるでもなく、すたすたと群青の長い髪を靡かせるように歩き出し、楽器を手に取り項垂れているヒツジィの真正面へ悠然と構え、そのまま紅い瞳が冷ややかな視線を彼にぶつけた。

「ヒッ……!」

「ヒツジィ貴方、随分偉くなったのね? ムスメちゃんの優しさとこの場所への想いを砕こうとするなんて、私達への挑戦かしら? あれは是非ホリさんに受け取ってもらいます。わかりましたね?」


 低いトーンでそう告げたツマにより、先程まで場を包んでいた楽しい空気が凍っていくように冷たい物に変貌する中で風も吹いていないのに揺れている彼女の髪と、揺れるように震えているヒツジィの体。

 ツマの重圧にヒツジィは堪らずといった様子でその場に土下座をするようにして大きく叫んだ。


「勿論でございます! 差し出がましい事を言ってしまい申し訳ございません!! 父には私の方から言っておきます故、ご心配なく!」

「あら、そう? ありがとう。あ、そうそうヒツジィ?」


 悲痛な叫びの内容によりツマの声には明るさが戻り、表情には笑顔が。ころりと態度の変わったツマが魔王と楽しんでいたワインの樽を指差す。

「開けてから気付いたのだけどあのワイン、シツジィ秘蔵の物の中でも、とっておきのワインだったの。ついでに話をしておいてね? よろしく!」

「ヨロシク!」

「御意……ッ!」


 敬礼のように手を挙げてそう告げたツマとその姿を真似をするムスメにより、ただでさえ項垂れていたヒツジィが力無く返事をすると、そのまま撃沈するように地面に突っ伏してしまった。大変だなぁ彼も……。


 とにかく色々とあったようだが貰えるのなら貰っておこう。

 弦楽器や管楽器など様々な物があるようだし、授与式も早々に切り上げて皆に自由にしてもらうとしようかな。


「よし、それじゃあこれで第一回武闘大会、並びに第一回遊戯大会の授賞式を終わります! 俺が用意した物は後日ね! 最後に素晴らしい物を賜ってくれた魔王様一家に盛大な拍手!」


 力の籠った拍手の音と歓声が響き魔王達が手を挙げてそれに応える。

 肩を落としているヒツジィには申し訳ないが、魔王達に貰った物のおかげでまた明日から忙しくなるぞ……。


「ホリ様、ボーットシテル、ドウシタノ?」

「ん? いやぁ、新たに作らないといけない物や集めないといけない物が出来たなって! まあそれは置いといて、とりあえず今日は魔王様達が飲んでいる秘蔵のワインを頂くとしよう! ごめんねヒツジィさん!」


 最後の気力を振り絞るように俺の言葉に拳を握り締めて返してきたヒツジィも取り込み、魔王ジェ〇ガによりその日は過去一番と言ってもいい程の数の酔い潰れた者達が続々とトレントの根を枕に眠りについた。


「うっ、うっ……、うぅっ、私は、私はですねぇホリ様……! 聞いてますかぁっ!? ホリ様ァッ!?」


 ヒツジィは泣き上戸だった。

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