息子について

6歳までの息子

 この辺りで、息子について、少しお話しして、また時系列に詳細をまとめて行こうと思います。6歳になるまで、どんな風に成長し、どんな風に周囲と関わり、彼という個人を確立しようとしていたのか。余りわたしの言葉だけで書くと、単なる親バカの子ども自慢になるので、なるべくわたしが見聞きした、親ではない他人が話していた息子の話をしたいと思います。


 保育園では年長さんで、20名程度の同年齢クラスの中で、リーダー的な役割をしていたそうです。理由を保育士さんに伺った所、ひとつには誰にでも優しく接する性格を挙げられました。例えば、遊びの輪に入れない子が入れば、先生よりも早くそこへ行き、息子とその子二人だけでも遊ぶ様な事や、これは実際にクラスに居たそうなのですが、摂食障害のある子がいて、一緒には給食が食べられないと知ると、息子は誰よりも早く給食を済ませるようになり、その子の手伝いに行く様になったそうです。


 そしてもうひとつが、つねに前向きに考え、物事に対して必ず別の案を持っていて、人々の仲を取り持つ性格だからです、と話していました。例えば、クラス内で揉め事が起きそうになれば、その間に入って、じゃあ、こうしたらいいんじゃないかな、と非常に前向きな提案をし、同じ年齢の子ども達を宥めて行く。そんなような事をいつもいつもしていたようです。性格的に優しく、機転の利く息子はクラスメイトから人気があり、男女問わず『将来結婚したい』とクラスの子達に言われることもあった様です。


 そんな息子の将来の夢は『ピタゴラ装置を作る事』と『宇宙飛行士』でした。宇宙飛行士については、どのタイミングで憧れる機会があったのかは、わたしには分かりませんが、例の装置を作るという事に関しては、かなり幼い頃から、テレビで流れる映像を見ながら、真似事をしていた事を思い出します。その為にどうしたらいいかを真剣に訊かれ、真剣にこういう大学に行けばいい、と調べて答えた覚えがあります。そのせいなのか、数字には不思議な程の執着を見せ、3歳になる前に九九を暗記し、6歳で小学校高学年の算数を解いていました。


 人よりほんの少し聡い、どこにでもいるお調子者の男の子。それがわたしの、息子に対する評価でした。率先してそうした性格になるように育てた記憶はないのですが、ただ、良かったな、と思えたのは、兎に角人に優しい子だった事です。保育士さん、保育園の親御さん、通っていた習い事の先生等、様々な方から共通して言われた事が、息子の優しさについてでした。


 沢山の人に優しく、将来に大きな希望を持ち、この子はどんな未来を手にするのだろうと、見ているのが楽しくなる。こうなって欲しい、という期待を掛ける事は、敢えてしなかったわたしの想像を易々と越えていく、そういう子どもでした。

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