第9話 終了
この時間だけは、時計の秒針さえ進むのがもどかしく感じる。机上の解答用紙に目を落とす。皆に勉強を教えてあげたのが自分の勉強になったようで、我ながら高得点の予感がひしひしと伝わってくる。
十、九、八、七――三、二、一。
自分の脳内カウントがゼロに差し掛かると同時に終了のチャイムは鳴り、教室内はざわめき出す。
四日間にわたるテストの疲れから、大きく伸びをする。
荷物をまとめ、早々に帰宅しようと廊下に出ると、ばったり村田に出くわす。村田はこちらに気付いたようで、手を振って走ってくる。
「テストお疲れ様。今から帰る?」
「うん」
「一緒に帰ろうよ」
勉強会をした際に分かったことなのだが、俺と村田の家は、同じ方向で、電車の一駅分くらいしか離れていなかった。
街路樹にとまるセミの鳴き声と、ジリジリと焼けるような日差しに包まれる通学路を村田と二人で歩く。
「そういえば市埜くん、テストどうだった?」
「まぁ、我ながらいい出来だったと思う。そう言う村田は?」
「うん。今回は市埜くんに教えてもらった所が割と出たし、悪くは無いと思う」
この調子なら、他のみんなも大丈夫そうだ。あとは結果を待つのみだった。
すっかり夜も深けた十時頃、俺は、グループでの会話を大いに楽しんでいた。グループの皆でテストの感想を言い合ったり、解けなかった問題をみんなで解いたりと、すっかりグループに打ち解けることができたし、に皆の感想を聞く分には赤点をとりそうな人はいなかった。
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