第10話 テスト返却

 今日の俺は、朝から気分が良かった。

 目の前の机上に並んでいる数枚のテスト、それには得点が記されている。それもかなりの高得点。どうやら俺の予感は当たっていたようだ。この点数ならば、夏休み中の補充授業になど、呼ばれるはずはなく、安心して遊園地のことだけを考えられる。

「なぁ、点数どうだった? 村田」

「市埜くんのおかげで、苦手な数学で、自己ベスト更新できたよ」

 昼食のパンをちぎって口に運びながら嬉しそうに村田は言った。

 家も近く、取っ付きやすい人ということもあり、最近は登下校も、昼食も一緒にいることが多くなり、一人でいる時間は前までと比べて格段に少なくなった。

「市埜くんはテストどうだったの?」

「俺か? 合計点学年トップ10だった」

「え!? 市埜くん頭いいとは分かってたけど、そこまでなのか」

 この時は少し恥ずかしくて言えなかったが、今回のテストが高得点だったのは、勉強会でみんなに教えた分自分の理解が深まったからだった。だから、元をたどれば村田のおかげだった。とても感謝している。

「これであとは、遊園地楽しむだけだね!」

「そうだな」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る