第6話今までなかった景色

 ――不思議だった。人と関わることを拒み続けたはずだったのに、信頼した人に裏切られるのが嫌で、大切な人がいなくなるのが嫌だったのに、今は他人と遊びに行くことを楽しみにしている自分がいる。そんな、ここ数年俺の中に存在しなかった感情のせいか、今日の授業は全く集中できなかった。帰宅すると、何となく携帯を確認した。すると、通知が来ていた。今回は、遊園地のグループからだった。グループのメンバーに挨拶をしていないことを思い出し、取り敢えず名前とよろしくとだけ送信する。すると、続々とよろしくと返信が来てどこかホッとした。

次の日の昼休みのことだった。戸成となりに呼び出され彼女の元へと行くと、そこには、戸成を含む六人の男女がいた。

「紹介するね。ここにいる八人が遊園地に行くメンバーね。まず、一人づつ自己紹介しよう!」

「じゃあ、まず俺からな」

 そう言うと、左右の髪を刈り上げた少しいかつい男子が立ち上がった。

「俺は、池端航太郎いけはたこうたろう。サッカー部に入ってる。よろしく」   見た目こそ厳ついが、優しそうな人で一安心だった。

「次、私いくね。私は、楠田陽彩くすだひいろ。バレーやってます。よろしくね」

 髪を後ろでまとめた気の強そうな女子で、背が女子にしては高い方だ。

「じゃあ俺ね。俺は、高部怜弥たかべれいや。バスケ部所属。よろしく」

 その名の通り背が高く180はあるだろうか、とにかく高い。

「私は、降旗知花ふりはたともか。野球部のマネージャーやってます。よろしく」

 綺麗な漆黒の長髪のおっとりとした女子だった。

「僕の番だね。僕は、村田遥斗むらたはると。部活には入ってないよ。よろしくね」

 雰囲気は明るいが、特にこれといった特徴がない。彼を一言で言うなら、人畜無害じんちくむがいといったかんじの男子だった。

「私は、戸部 美鈴とべみすず写真部に入ってます。よろしく」

 ショートカットの良く似合う活発な女子だった。

「じゃあ、改めて戸成 綾乃となりあやのです。部活は帰宅部。よろしくね」

 とうとう自分の番が回ってきた。まともに自己紹介をするのなんて何年ぶりだろうか。今年の入学式後のホームルームでの自己紹介なんて、適当にしたのを思い出した。

「市埜 いちのゆうです。部活は入ってない。よろしく」

 全員の自己紹介を終え、取り敢えず今日はお開きとなった。みんな良さそうな人で取り敢えず安心した。これが、今まで自分が拒み続けた世界なのだと知って、少し勿体ないことをしていたなと実感した。

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